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瀬尾 最近になって「もっとこんなことをしてあげたかった」という気持ちも出てきました。

 コロナ禍のここ2年は私自身が感染したこともあり、瀬戸内をコロナで亡くしたくない気持ちで一杯で、来客を制限したり、一緒に食事をとるのを控えたり……。

 瀬戸内は人と会って話をするのが好きだったので、それを十分に叶えてあげられなかったのが心残りです。

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©山元茂樹/文藝春秋

「楽しくてかわいらしい瀬戸内の姿を知ってほしい」

――食事といえば、寂聴さんは肉好きで知られていましたよね。おいしそうに晩酌される姿もドキュメンタリーで見ました。

瀬尾 お肉もお酒も、最期まで楽しんでいましたね。本人も「私はよく食べるから死なないんだね」としょっちゅう言っていました。

 夏になると「暑いからビール飲もう」みたいな感じで、足が悪かったのですが、なぜか酔ったときだけ軽やかに歩くんです(笑)。

――楽しい酔いなんですね。

瀬尾 酔って帰ってきたとき、とりあえずベッドに誘導して「先生、着物だけ脱いで寝ましょう」と言ったら、「うるさい、離せ!」と言われたこともあります(笑)。

 必死に抵抗している瀬戸内が面白かったので動画に収めて、後日シラフのときに見せたら大笑いしていました。

――多くの人にとって寂聴さんは「生き仏」のような存在だったと思いますが、瀬尾さんの視点から見るととってもチャーミングで新鮮です。

瀬尾 駅のホームで瀬戸内を見かけた人が合掌したり、ご利益があると思うのか、触ってこられる方もいました。でも、瀬戸内自身が神格化されることを不思議に思っていました。

 私としても、こんなに楽しくてかわいらしい瀬戸内の姿を知ってほしいと思っていました。

瀬尾さん提供

――そんな寂聴さんの素顔を綴った瀬尾さんのデビュー作『おちゃめに100歳! 寂聴さん』(光文社)はベストセラーになりました。

瀬尾 普段の瀬戸内はツッコミどころ満載なんですよ。トイレのスリッパのまま家中歩き回ってたり、ハンドクリームを歯磨き粉と勘違いしてずっとコップの中に挿してたり(笑)。