2021年11月、99歳でこの世を去った瀬戸内寂聴さん。作家として、僧侶として国民的に愛された寂聴さんを10年間そばで支えてきたのが、66歳年下の秘書・瀬尾まなほさんだ。

 出産したばかりの第二子を抱え、お母さんとともに上京していた瀬尾さんに、寂聴さんとの最期の日々を聞いた。

©山元茂樹/文藝春秋

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「本当はそばにいて、泣くだけ泣いて過ごしたかった」

――先日の5月15日が瀬戸内寂聴さんの生誕100周年でした。寂聴さんの逝去から半年、瀬尾さんはどのように過ごされていましたか。

瀬尾まなほさん(以降、瀬尾) あっという間だった、というのが本音で。悲しんでばかりいられないのは、子どもが生まれたおかげもありますね。

 そもそも去年の10月に容態が急変するまでは普通に瀬戸内と会話もできていたので、「5月にはコロナも収まっているだろうから、著名人の方や編集者、友人たちをたくさん呼んで、盛大にホテルでお誕生日会をしたいね」と話していたんです。

――本当に想定外のお別れになってしまったんですね。

瀬尾 9月に風邪をこじらせて半月ほど入院しましたが、退院後は元気を取り戻してお酒もお肉もいつものように食べていました。それが10月に再入院となり、容体が急変し、お医者さまから「年を越すのは難しいかもしれない」という一言があって、誰も想定しない事態になってしまいました。

瀬尾さん提供

――瀬尾さんたちの事務所の公式発表より前に、SNS上で訃報が拡散されてしまう災難もありました。

瀬尾 本当は瀬戸内のそばにいて、泣くだけ泣いて、親しい人たちと静かに最期の時間を過ごしたかったんです。でも、情報が漏れてしまったことで発表せざるを得ず、事務所の電話や私個人の携帯に知らない番号からの電話が鳴りやまず、外には記者たちがたくさん張り付いていました。

 寂庵の自分の部屋で、私たちのすぐ近くで瀬戸内は眠っていたんです。それなのにずっとそばにいられず、他のことに気を取られたことがすごく悔しかったです。

――本当にやりきれないです。