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 児童福祉法の第6条3第5項で、“特定妊婦”は「出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦」と定義されている。家庭環境にリスクを抱えていたり、複雑な家庭内事情を持つケース、育児が困難と予想される妊婦などが該当する。主に予期せぬ妊娠や未成年の妊娠、経済的に子供を育てることが難しい妊婦に対して子供の命を守るために行政が行う公的支援である。

離婚後に一変した「明るく気さくだった」阿部容疑者

 一方、阿部容疑者について取材を進めると、「それまで明るく気さくだった」という様子が、前妻との離婚を機に一変したという証言を得た。阿部容疑者は釧路市内のアパートで前妻との同棲を経て、結婚後の2019年にローンを組んで自宅を新築している。

阿部容疑者(Facebookより)

 阿部容疑者と親しかったという前出の近隣住民が語る。

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「阿部さんは誠実で真面目という印象でした。新居の施工が始まる時に阿部さんが菓子折りを持ってご挨拶に来られ、親戚の方を呼んで庭でバーベキューをしていた時も『煙がそちらに行ってご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんが、すみません』と声をかけてくれるほど気遣いのできる方でした。

 引っ越してこられてすぐに柴犬を飼い始めて阿部さんがよく散歩していましたよ。以前の奥様は阿部さんと同世代で、少し年上かな。利発なしっかりした女性で、すぐに妊娠されて翌年には元気な男の子を出産しました」

阿部容疑者が前妻と住んでいたアパート ©文藝春秋

 念願のマイホームを購入し、子宝にも恵まれ、何ものにも代え難い幸せを手に入れたはずの阿部容疑者。しかし幸せな時間はそう長くは続かなかった。前妻と会話をしたという別の近隣住人が打ち明ける。

「前の奥さんは妊娠してお腹が大きくなるまで車に乗って働いていました。産休を取り、出産してすぐにまた復帰したようです。しかし、出産して半年くらい経った頃に偶然、奥さんが『私、別れたんですよ。どうもお世話になりました』と話しているのを聞きました。荷物を取りに来たようでした。生まれたばかりのお子さんと犬は奥さんが連れて行きましたよ」

 新居での暮らしからわずか1年。妻子と愛犬を失い、1人暮らしを始めた阿部容疑者は、“近所付き合い”とは徐々に距離をおきはじめた。