借入は増えるばかりだ。孫さんは、ソフトバンクGの借入金は純資産に対して10%に抑えるとしていたが、それが3月末で20%に上昇。現在は孫さん自身が限界とする25%に近いのではないか。ソフトバンクGが保有する会社はほとんどが赤字で、担保価値があるのはアリババとアームくらいだ。他は設立以来、ほとんど稼いだことのない未公開会社ばかりで担保に値しない。借金ももう限界だろう。決算説明会で「今の状況は『守り』」だから「投資基準の厳格化」をはかると同時に「継続的な資金化」を続けると語っていたが、市場の強烈な逆風に出資先の価格は落ちる一方で、資金化をどの程度進めることができるのだろうか。
経営責任を明確にせよ
まともな公開企業ならばこれだけの損失を計上したら、当然、経営責任を明確にする時期だ。今後の経営環境を考えるなら、少しでも早く後始末ができる人材を選ぶべきだが、ソフトバンクGは、孫さんの「個人商店」だからそれができない。投資家も金融機関も孫さん個人に賭けている。だから企業としてガバナンスがまったく利かない。投資先選びもその原資を集めるのもみんな孫さんがやっている。
孫さんは、経営者との面談で得た直感で投資するかどうかを判断する人で、慎重なデューデリジェンス(投資先の価値やリスクの調査)に力を入れていない。部下は孫さんが決めたことには反論できない社風と聞く。その結果、破綻先が多く出てきてしまうのだ。孫さんがAIの未来を語り、人類の幸福を語っても、その夢は雲散霧消してしまう。
つまずきのきっかけとなった「ウィーワーク」(米国)についても、なんだかんだと「夢」を振り撒いてみせたが、その実態は、昔ながらの「雑居オフィス転貸業」に過ぎない。大きなスペースを借り、それを多数の店子に転貸する古くからある不動産業の一形態だ。
2019年1月に孫さんはこの会社の価値が470億ドルあるとみて100億ドル投資した。株式公開すれば600億ドルになるという話もあった。ところが公開準備が進むと問題が次々と明るみに出てこの価格が150億ドルに萎み、公開は見送られた。その結果、資金繰りが滞り、彼が入れ込んでいた創業者アダム・ニューマンを解雇して再建に入る。昨年10月に晴れて公開し最高値14ドル97セントを付けるが、その後ほぼ一貫して下落。5月の底値が4.5ドルで時価総額は40億ドル。孫さんが付けた価格の10分の1にも満たない。