笑って読んでいただきたい一心でギャグをふんだんに入れた
──「サタデー大腸ナイトフィーバー」ですね。『腸よ鼻よ』は、病状や治療経緯がかなりリアルに描かれているのに、ギャグ要素がふんだんに盛り込まれているせいか、深刻な場面でもうっかり笑ってしまいます。
島袋 それ、狙っているところなので、うれしいです! 1巻のあとがきにも描いたんですが、『腸よ鼻よ』は難病について描いたマンガとはいえ、できれば笑って読んでいただきたい一心でギャグをふんだんに入れているんです。なので、「居酒屋で飲んでいたら隣のテーブルから聞こえてきた不幸自慢」くらいの感覚で、読んで笑ってもらえたら最高です。
──明るい闘病エッセイにしたのは、ギャグマンガ家としての思いもあるんですか? 島袋さんは、もともとギャグマンガ家を目指しておられたのでしょうか。
島袋 もともとはギャグがふんだんに盛り込まれたストーリーマンガが描きたかったんです。妖怪とかオカルトチックなのが好きで、専門学校に「出張編集者」としてMさんが来たときに妖怪ストーリーを見せたんですけど、反応が薄くて……。「じゃあこれなら」とそのとき描いていたギャグマンガのネームを見せたら「これいいね、ギャグだね!」と太鼓判を押してもらって、4コマのギャグマンガ『蛙のおっさん』でデビューさせていただきました。
闘病エッセイマンガをギャグで描こうと思ったのは、「ギャグが面白い」と担当さんに褒めてもらったことも大きかったですが、それ以上に闘病エッセイってだいたい、読んでいるほうがつらくなったり「かわいそう」と気持ちが落ち込んだりして、読めなくなってしまうものが多いじゃないですか。
私は、描くからにはたくさんの人に読んでほしいと思っていたので、「かわいそうな闘病エッセイマンガ」が読まれないんだったら、「かわいそうじゃない闘病エッセイマンガ」か、「かわいそうだけど、思いっきり笑える闘病エッセイマンガ」を描こうと決めて描き始めました。
高尚な作品を目指しているわけではない
──実際に、同じ病気で悩んでいる読者からの反響も多いと聞きました。
島袋 同じ病気の人から「元気が出た」とか、「ずっと下血が続いていたけど、『腸よ鼻よ』を読んで病院に行ったら早期発見できました」というような感想をいただくと、「私のマンガも役立ってんな~」と思えてうれしいですね。
でも看護師を目指している方から、「潰瘍性大腸炎のところとストーマのケアに関して満点とれました。『腸よ鼻よ』のおかげです!」と言っていただいたりすると、うれしい反面、「私のマンガで勉強になるのか……?」って、ちょっとびくつきますね。
先ほども言ったように、そもそもの目指しているところが「ストーマを知ってもらう架け橋になりたい」とか「潰瘍性大腸炎と闘う患者に希望を届けたい」という高尚なものではなく、「読んで笑ってもらいたい」なので、「潰瘍性大腸炎/マンガ」と検索すると「島袋全優」『腸よ鼻よ』が上位に出てくるようになったのは畏れ多いくらいです。
マンガって多分、Twitterやブログ、YouTubeよりもハードルが低いと思うので、一人でも多くの人に知っていただき、読んで笑ってもらえたらうれしいですね。