軽自動車部門、「下駄車界のエース」が1位に
日本全国における保有車両のうち、約4割を占める軽自動車。それだけに、価格上昇が国民生活に与える打撃は大きい。カテゴリ平均では、1台あたり約26万円値上がりし、20年前の1.4倍になった。
【1位】スズキ・アルト 55.5万円→94.4万円(2002年比:170%)
軽自動車部門の1位は長らく「庶民の足」として生活を支え続けてきたスズキ・アルトである。スズキの乗用車最廉価モデルとして、装備を必要最低限に絞ったアルトのベースグレードだが、2021年のモデルチェンジで大幅に価格が上昇。
先代のモデルは「73.7万円~」の設定だったが、現行モデルでマイルドハイブリッドや先進安全装備を標準搭載し、20万円以上も値上がりしてしまった。
【2位】ダイハツ・ミラ(現ミラ イース) 55.5万円→86万円(2002年比:155%)
奇しくも今回、軽自動車の2大メーカーによる最廉価モデルがワンツーフィニッシュを飾った。
2位のミラ イースは現在モデル末期にあり、ベースグレードには先進安全装備のパッケージは搭載されない。それでも、燃費性能やボディ剛性の向上にともなう価格上昇は避けられなかった。
「軽で一番安い車」たちの値上がりは、「必要最低限」のハードルが高くなっていることを如実に表している。
【3位】三菱・eKワゴン 91万円→132.6万円(2002年比:146%)
三菱・eKワゴンは、スズキ・ワゴンRなどに代表される「ハイト系」の車種である。20年前のモデルに比べると、先進安全装備の標準搭載に加え、内装デザインも洗練された。近年顕著な「軽自動車の上質化」の流れに乗り、価格も相応に上昇している。
【最優秀賞】スズキ・ワゴンR 86.3万円→109.9万円(2002年比:127%)
ワゴンRは1993年の登場から市場を席巻し続け、現在主流となったN-BOXなどの「スーパーハイト系」の登場まで「軽の国民車」として長く親しまれてきた車種である。
このような車種の価格上昇が抑えられている点は歓迎すべきことだが、現行のワゴンRはモデル末期であり、最廉価グレードにハイブリッド機構や先進安全装備は搭載されていない。今後のモデルチェンジに際して、どれだけ価格増を抑えられるかに期待したい。
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以上、今回の比較では、上昇率の低いモデルでも20年前の1.2倍、平均的には1.6倍ほどの値上がり傾向が見られた。
もちろん20年前と比べれば、車の性能は全般的に向上している。加えて、世界的な物価上昇や、環境性能・安全性能に関する規制強化といった背景もあり、メーカー側にも止むに止まれぬ事情がある。
しかしそれはあくまで、マクロな視点での話である。個々の生活主体が直面するのは、「かつて200万円だったものが、320万円になった」という事態にほかならない。差額の120万円について、たとえば「10年間、月に1万円ずつ負担が増える」と考えると、なかなかにグロテスクな現実ではなかろうか。