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「お友達内閣を作ろうとしているのではない」

 もう1つは、この取締役候補が選任されれば自分はCEOに戻るつもりであり、復帰後には昨年スタートさせた中期経営計画を復活させると話した。

 瀬戸は4人の社外取締役候補について説明し、「いずれも立派で実績もある方ばかりですが、もう1つ候補者には共通項があります。いずれも信頼できる第三者からの紹介で出会った人ということです。かねてからの友人ではなく、私を監督し、𠮟り、必要によっては交代させられる方々であり、誰の私利私欲も退けられる人ばかりです」と強調した。それは指名委員会や株主に対するメッセージで、「お友達内閣を作ろうとしているのではない」という意思表示である。

 もう1つ語気を強めたのは吉田がトステム出身者であることだった。自分たちの提案にトステムもINAXもないということを伝えたかったからだ。その上で今の自分の心境を語った。

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「昨年10月31日にCEOを退任してから何をすべきかをずっと考えました。正直申し上げて他の仕事をしようかと思ったこともあります。でも私の行動規範の最後の拠りどころは『Do The Right Thing』です。虚心坦懐に自分がすべきことを考えた時、LIXILグループに戻って仕事を全うすることが正しいことだと結論づけました」

「今回の経営者交代は明らかに正しい事ではなかったと思います。これを許したら、LIXILグループは正しい事をしない会社と思われてしまう。それでは従業員や株主に迷惑がかかるし、そもそも従業員に対して『正しいことをしよう』と言い続けてきた自分自身がそこから逃げたことになる。だから復帰を目指すことにしました」

©getty

 質疑応答に移ると、メディアからの質問は退任の経緯に集中した。すでに『日経ビジネス』や『FACTA』、『日本経済新聞』などが報じていたことに加え、公表された調査報告書要旨にも書かれていることではあったが、瀬戸が公の場に出たのは昨年10月31日以来のこと。メディアは本人の口から聞きたいと思ったのか、さかんにこれまでの経緯を問いただした。

 次に多くの質問が寄せられたのは瀬戸の潮田に対する思いだった。瀬戸は「LIXILグループを経営する機会を与えてくれたことは感謝したい」と前置きした上で、国内事業でシェアと利益率のどちらを重視するか、ペルマをどう捉えるかといった点で潮田とは考えが違ったことを指摘した。さらにシンガポールに住みながら経営が出来るのかなどと潮田の経営スタイルに疑問を投げかけ、事実上、潮田の一存で人事が決まってしまうLIXILグループのコーポレートガバナンスは正さざるを得ないと語った。

 一般的に記者会見の所要時間は40分から50分程度で、長くても1時間というのが目安である。しかし、少しでも多くの世間や株主に自分たちの行動は正義であると認識してもらう必要があると考えた瀬戸は吉野と相談して会見時間を1時間半と設定し、さらに質疑応答が終わった後に発表者をメディアが囲んで追加の質問をする、いわゆる「ぶら下がり」にも応じた。会見が終わったのは午後3時を過ぎていた。

2通りのプロセス

 3月20日に機関投資家4社と伊奈が、潮田と山梨の解任を議案とする臨時株主総会の開催を請求した。これが賛成多数で可決されたとして、LIXILグループのその後の経営をどうするか。瀬戸が4月5日に発表したのは自身を含む8人の取締役が選任され、自分がCEOに復帰して舵取りをするというものだった。

 復帰は2通りのプロセスが考えられた。株主提案で8人の選任を求めて定時株主総会に臨み、株主の審判を仰ぐというものが1つで、もう1つは指名委員会や取締役会が瀬戸を含む8人を会社提案の候補者にするという方法である。それを4月5日の記者会見で話した瀬戸は、後者のプロセスの可能性が10分にあるのではないかと考えていた。この時点でLIXILグループは定時株主総会に諮る会社提案の取締役候補を決めていないからばかりではない。他にも理由があった。