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大御所演歌歌手に通じる“休まない”生き方 巨人・丸佳浩をもっと評価したい理由

文春野球コラム ペナントレース2022

「無事是名馬(ぶじこれめいば)」という言葉があります。

 エンターテインメントの世界に身を置く者として、この言葉の重みを感じずにはいられません。ファンが「見たい時に見られる」という存在こそ、もっと評価されるべきだと感じるのです。

 歌謡・演歌界の大先輩である北島三郎さんや五木ひろしさんなどは、大きな劇場で1日2部制の座長公演をこなしておられます。年間通して続けていれば、体調がベストな日ばかりではないはずです。声が出にくい日や体が重いと感じる日もあるでしょう。

 それでも、幕は待ってくれません。ステージに立った以上は、最高のパフォーマンスを見せる。それが真のプロであり、スターなのだと学ばせてもらっています。

骨折しても休まない男・丸佳浩

 プロ野球の世界も同じではないでしょうか。スタジアムにいる観客は毎日来られるファンばかりではありません。

 2カ月前からチケットを取り、楽しみにしていた試合直前。お目当ての選手がケガで登録抹消になってしまったとしたら……。仕方ないと割り切りつつも、落胆は大きいはずです。

 日々、当たり前のように試合が繰り返されるなかで見落とされがちですが、試合に出続けるということは160キロのボールを投げることと同じくらい価値があると思うのです。

 今季の巨人で開幕からフル出場を続けているのは、丸佳浩選手だけです。チームとしては首位・ヤクルトに大きく引き離されて苦しいシーズンが続いていますが、それでも2位に踏みとどまっていられるのも丸選手のような大黒柱が休みなく働き続けていてくれるからです。

丸佳浩

 丸選手のタフさについて、印象深い出来事があります。2020年10月30日、巨人はリーグ連覇を達成しました。丸選手は広島時代の2016~2018年にリーグ3連覇、巨人移籍後の2019~2020年に連覇と「ひとり5連覇」の快挙でした。

 その優勝会見で、原辰徳監督が「丸は実は骨折していた」と衝撃の事実を明かしたのです。この年、丸選手はフル出場して打率.284、27本塁打と立派な成績を残していました。その点について話を振られた丸選手は「あまり話したくない」「自分でやれると言った以上は言い訳をしたくない」と多くを語りませんでした。丸選手のプロとしてのプライドを感じさせるシーンでした。

 とはいえ、骨折が完治しないまま試合に出続けて、大丈夫なわけがないでしょう。「即戦力」の評価を受けてプロに入ってきたアマチュア野球のエリートでも、ちょっとした体調不良やケガが原因で通用しなくなる厳しい世界なのです。ケガを隠しながら試合に出続けて、毎年コンスタントに成績を残す。その偉大さを「当たり前」とは思いたくありません。

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