誰でもどちらかの特性を持っている
「最初にやっていただいたチェックリストは、半分以上あてはまると、【A】の場合はアスペルガー症候群、【B】の場合はADHDの疑いがあると言われます。しかし、これまで発達障害とは関係ないと思っていた人でも、意外と多くあてはまって驚いたかもしれません。
発達障害とは、風邪やインフルエンザのように0か100ではなく、グレーゾーンが大きいもので、誰にでも気分の波があるように、生活環境や人間関係などで症状が強く出る場合もあれば、不自由がないまま過ごせる場合もあります。
『あの人は几帳面でいつも趣味に没頭している』とか『あの人は忘れっぽい人だけど、人当たりはいい』などというように、人には個性があります。発達障害とはその個性の波が強すぎるために、周りに迷惑をかけたり、自分ができないことが浮き彫りとなって生きづらさを感じていたり、うまく世の中が渡れずに困っている状態のことをいいます。
人は誰でもどちらかの特性を持っているもの。アスペルガー症候群、ADHDのチェックリストで数が多く当てはまったからといって、現在までの生活で不自由を感じていなければ全く問題はありません」
うつ病で見過ごされているケースも
「しかしながら、自分では頑張っているつもりなのにトラブルやミスが続き、周囲に迷惑をかけてしまっている、いつも同じことで怒られてしまうなどで、うつ症状や不安症状などが出るようになることもあります。
うつ病だと言われたまま治療を続けていたりと、見過ごされている場合も少なくありません。
実際に、患者さんの中でもうつ病の治療をしていたけれどもなかなかよくならないといって様々な精神科を受診し、何年も経ってから私のところへ来て初めて発達障害だとわかったケースもあります。精神科医でも発達障害の診断はとても難しいものなのです」
社会の風当たりが強くなっている
「現在は限られた時間の中で多くの情報をいかに処理できるかが重要となっていて、個人の違いにいちいち対応できるだけの余裕が社会全体でなくなっており、発達障害の人たちに対する風当たりも強くなってきています。
第一次産業が中心だった頃は、病気の認識もまだなかったということもありますが、発達障害は『個性』と捉えられていて、一人ひとりに合わせる余裕がありました。
子どもの頃の話でいえば、近所の柿を盗んだり、隣の子を授業中に蹴飛ばしたりする子は単なる『やんちゃ』な子。近所の怖いおじさんから大目玉を食らっても、それで許されるような環境がありました。しかし今はどうでしょうか。どちらも裁判沙汰、警察を呼ばれてしまうことになります。
社会の構造が変わってきたために、発達障害の人の強い個性やミスなどが目立つようになり、発達障害という言葉がより注目されるようになってきたのだと考えています。
その中でもアスペルガー症候群とADHDは、大人になってから発見されるケースが少なくない発達障害ですが、特に診断は受けていないけれども自分で『発達障害かも』と感じている場合や、診断は受けていない上に自分自身でも全く自覚がない場合が『大人の発達障害』という言葉で問題となっています」