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松本剛、近藤健介、上沢直之…ついに揃ったファイターズ「93世代」の11年

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/07/08
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新庄剛志監督はようやく揃った「93世代」をチームの中心に考えている

 現在は誰もが認めるエースになった上沢も、山あり谷ありのプロ人生を送る。2016年に日本一となった際は肘の故障で離脱していた。同期揃って活躍という夢も、どうしてもかなわない。2017年に戦列に戻ると、近藤が上記のヘルニアでシーズン途中から姿を消した。2018年に復活し11勝を挙げた時には、松本が定位置を失っていた。そして上沢自身も、2019年の夏、DeNA戦で打球が左膝を直撃するという衝撃的な故障で1年ほど1軍から姿を消した。3人が揃ってレギュラーで活躍した時期というのは、いまだないに等しいのだ。

 今季就任した新庄剛志監督は、この「93世代」をチームの中核に据えようとしていたように見える。投の中心には上沢、打の中心には近藤だ。近藤には春先、ほぼ経験のなかった中堅を守らせ、野手全体を見て指示を出す役割を期待した。自身の現役時代の象徴だった赤いリストバンドまで与えたほどだ。上沢には長いイニングを任せるのが基本方針。そしてまさかの開幕4番に据えた松本が、あの2017年以来となる大活躍でパ・リーグの首位打者をひた走る。

 元GMで、現在はスカウト顧問を務める山田正雄さんにこんな話を聞いたことがある。「一緒に苦労した選手が揃って1軍へ上がってくる流れを作ると、チームは強くなるんだよ」。2006年からの日本ハム黄金時代が確かにそうだった。1978年生まれの高橋信二から、小田智之と飯山裕志、松坂世代の森本稀哲、さらに田中賢介と、生え抜きの中心選手が1学年違いで並んでいた。皆、21世紀を迎えたころの鎌ケ谷で、泥にまみれていた姿を思い出す。

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「93世代」は本来なら、2016年の日本一後を担う予定だったはずだ。それが中田、大田、西川とすぐ上の世代がいなくなった今、ようやく3人揃っての活躍を見せようとしている。30歳が目前の、選手としては脂の乗り切った時期といえるだろう。今季も最下位をひた走り、若返りを進める日本ハムで現在の希望といえば、吉田輝星、野村佑希、万波中正がいる「00世代(2000〜01年生まれ)」ということになるだろうか。ただ、ついに揃った「93世代」にもう一度注目してみたい。すっかり大人の顔になった3人の姿もまた、チームを成長させる原動力になるはずだ。

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