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なぜロッテに“長距離砲”が生まれないのか 安田尚憲と山口航輝に期待

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/07/31
note

「全力で打つのって凄く体力を使うんですよ」

 あるコーチの方に伺ったことがあります。

「7分間、全てのボールを全力で打つのって凄く体力を使うんですよ」

 ですから、「全力で行けよ」とハッパをかけてもコーチが見ていない隙に何球か「流して」しまう選手は数多くいるんだとか。

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 投手でも同じようなことがあります。これは亡くなられた関根潤三さんが仰っていたのですが、「ブルペンでストレートを投げ続けるのって、すごく疲れるんだよ。変化球を交えると、ちょっとだけ楽なんだ」。

 なかなかブルペンで最初から最後まで見続ける機会はありませんが、おそらく100球全てストレートを投げるピッチャーはそうそういないでしょう。

 しかし、ソフトバンクは柳田選手ら主力が、フリーバッティングで手抜きすることなく、フルスイングで当たり前のようにずっと打っています。すると、それを見ている若手たちは自然と全力で振り続けざるを得なくなる。その連鎖がチームの「伝統」を形作っていくんだと思います。逆に言えば強打者の育つ環境は一朝一夕にできるものではない……。

 千葉ロッテには安田尚憲という期待の長距離砲がいます。関係者によれば、「ボールを飛ばす」ことに関しては同期の村上宗隆、清宮幸太郎に決して引けを取らないと言いますし、フリーバッティングでもライトスタンドに特大のホームランを飛ばしています。

安田尚憲

 しかし試合になると彼の打球で飛距離が出るのはライトのポール際がほとんどで、前半戦のホームラン数は2本のみ。レフトや左中間の方向はもちろん、右中間にもあまり大きな打球が飛ばないのが気掛かりです。専門的なことはわかりませんが、日々の鍛錬でそれを克服できれば、もう1人の期待の長距離砲・山口航輝選手と、故障の癒えた井上晴哉選手と合わせて30本をクリアする力は十分に持っているはずです。

 幸い、前半戦に大きく構想が崩れたリリーフ陣は東條、小野、ゲレーロ、益田の4枚にオスナという助っ人が加わったことで形が整ってきました。もちろん打線は両外国人の復調が一番ですが、加えて安田、山口の2人には今からでも新和製スラッガー伝説の第一歩を作り上げてほしい。と言っても、一足飛びに30本は打てるわけはないので、まず10本。前半戦で一番ホームランを打ったのは山口の8本ですが、日本人で早く誰かに10本打ってほしいものです。

 優勝戦線はまだまだ大丈夫ですよね。なんたって、滑り込みセーフは、ここ数年来のお家芸になっていますから‼️

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