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「ヤバい親」たちが人事を悩ませるケースも

 最後に番外編で、就活生の「親の問題」。近年、就活生の親がわが子の就活に介入し、人事担当者を困らせているようです。

「ある男子学生と1次面接が終わった後、父親から自筆の推薦文書が届きました。その学生はかなりの高評価で2次面接を予定していたのですが、わが子を褒めちぎるその推薦文書を見て、不採用に変更しました」(通信)

「ある女子学生に不採用を通知したところ、父親から抗議の電話が来ました。最初は冷静な口調でしたが、やがて激高し、『容姿で判断したんだろ!』と難癖をつけてきました。それでも怒りが収まらず、当社の過去の不祥事を蒸し返したりして延々と罵倒していました」(小売)

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 モンスターペアレント対策が、採用活動の新たな課題かもしれません。人事担当者は色々なタイプの人を相手にしなければならず、悩みは尽きないようです。

結局、冒頭の就活生はどうなったのか?

 ところで、個人的に気になったのは、ヤバい就活生の「採用・不採用」です。今回取材した範囲では、「逆恨み系」はもちろんのこと、「ウケ狙い系」も「天然系」も、すべて不採用でした。

 冒頭で紹介したすしざんまいポーズの就活生は、窮地に追い込まれた際の対応としてはなかなか秀逸。「採用しようという話にならなかったのですか?」と尋ねたところ、人事担当者は即座に否定しました。

「この一件を人事部内で共有したところ、『面白いヤツだね』とか『ほー、なかなかやるじゃん』という感想でしたが、『よし、採用しよう』という意見はなかったですね。普通に不採用にしました」

 ヤバい就活生を排除すれば、新人が入社後にトラブルを起こすというリスクを低減することができます。ただ、結果として角が取れた学生ばかりを採用し、やがて企業は画一的な集団になってしまうのではないでしょうか。

「その懸念はありますね。経営陣からは『尖った人材、突き抜けた人材を採用しろ』と言われていますが、ヤバい学生を採ると後で配属先から文句を言われるので、やはり無難な学生を採用しています」(商社)

画像はイメージです ©iStock

「学生の就活対策が進化し、面接で変なところを見せないということを徹底しているので、採用時に本人の性格や特徴を掴みにくくなっています。入社後に『あれ、こんな人だったっけ?』と思うことがよくあります」(サービス)

 経済学者シュムペーターによると、イノベーションの本質は「新結合の遂行」。つまり、異質な考えが混じり合うことによってイノベーションが生まれます。自分たちとは異質の就活生を「ヤバい」と排除する日本企業は、イノベーションが起こりにくく、成長・発展しにくいと懸念されるのです。