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「日本が核を持つことは、世界にとっても望ましい」エマニュエル・トッドが語った“この国の平和を守る”唯一の方法

『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2

source : 文春新書

genre : ニュース, 社会, 政治, 国際

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 ウクライナ危機は、歴史的意味をもっています。第二次大戦後、今回のような「通常戦」は小国が行なうものでしたが、ロシアのような大国が「通常戦」を行なったからです。つまり、本来「通常戦」に歯止めをかける「核」であるはずなのに、むしろ「核」を保有することで「通常戦」が可能になる、という新たな事態が生じたのです。これを受けて、中国が同じような行動に出ないとも限りません。これが現在の日本を取り巻く状況なのです。

 ですから日本には再軍備が必要となるでしょう。そしてもし完全な安全を確保したいのであれば、核兵器を保有するしかありません。

 自律を選んで核兵器を保有するのか、あるいは偶然に身を任せるのか。偶然に委ねるというのも、ひとつの道ではあるかもしれません。日本は、地震など、いつ起きるかわからない災害という偶然とともに生きてきた国であるからです。しかし昨今のベネズエラに対するアメリカの行動ひとつとっても、こんな身勝手に振る舞う国に自国の運命を委ねてよいのか、と不安を感じざるを得ません

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「核シェアリング」も「核の傘」も幻想にすぎない

 いま日本では「核シェアリング」が議論されていると聞いています。しかし、「核共有」という概念は完全にナンセンスです。「核の傘」も幻想です。使用すれば自国も核攻撃を受けるリスクのある核兵器は、原理的に他国のためには使えないからです。中国や北朝鮮にアメリカ本土を核攻撃できる能力があれば、アメリカが自国の核を使って日本を守ることは絶対にあり得ません。

写真はイメージです ©iStock.com

 自国で核を保有するのか、しないのか。それ以外に選択肢はないのです。

 ヒロシマとナガサキは、世界でアメリカだけが核保有国であった時期に起きた悲劇です。核の不均衡は、それ自体が不安定要因となります。中国に加えて北朝鮮も実質的に核保有国になるなかで、日本の核保有は、むしろ地域の安定化につながるでしょう。

第三次世界大戦はもう始まっている (文春新書 1367)

エマニュエル・トッド ,大野 舞

文藝春秋

2022年6月17日 発売

「日本が核を持つことは、世界にとっても望ましい」エマニュエル・トッドが語った“この国の平和を守る”唯一の方法

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