とはいえ、1500万円という価格や設置場所などを考えると、庶民がおいそれと買える代物ではない。いったいどんな人が購入しているのか。
そこでシェルターを購入した人に話を聞きたいと思い、吉山氏に紹介を依頼したところ、意外な返事が返ってきた。
「さすがにそれは無理ですね。わざわざ自分からシェルターを買ったと公表する人なんて、世界中どこを探してもいません。シェルター先進国の米国にさえ、そんな人はいないでしょう」
シェルター購入者が、「秘密主義」な理由
なぜシェルターの購入者は秘密主義なのか。言われてみれば納得なのだが、そこにはこんな事情があるのだという。
「購入したことを公表して、家にシェルターがあるというのを親戚や近所の人などに知られたらどうなると思いますか。本当にミサイルが落ちたり大地震が起きたりしたとき、『助けてくれ!』『入れてくれ!』と、みんなその家に押しかけてきますよ。
そうなったら無下に断るわけにはいきません。だから、みんなシェルターの購入を隠すんです。冷たい言い方になりますが、シェルターというのは自分の家族を守るために高いお金を払って購入するもので、他人を守るためのものではないんです」
近所の人に「なんの工事?」と聞かれたら…
購入者がシェルターをどれだけ秘密にしたいのかは、設置工事を行う業者との秘密保持契約をみてもよくわかる。吉山氏の会社では、事前に工事業者から「自分の家族にもシェルターの工事をしていることを口外しない」と一筆もらっているという。
「それくらい秘密保持に神経を使っています。ただ、設置工事は2週間ほどかかるんですが、そのうちの半日、クレーンで吊り上げてシェルターを地中に埋める作業を行うときだけ、外からシェルターの本体が見えてしまうことがあります。
そのとき近所の人から『なんの工事をしているのか』と聞かれたら、『いざというときのための貯水槽を埋めているんです』と答えます。形状的にもシェルターと貯水槽はよく似ているので、そう言っておけばシェルターだと疑う人はまずいません」