災害への備えとしては、まず水や食料品の備蓄が挙げられますが、停電した中でしばらく過ごさなくてはならないとなると、次に準備しておきたいのは電源です。スマホなどのバッテリーはいつ途切れるか分かりませんし、夜間の照明も、懐中電灯で代用するには限界があります。まとまった電力が確保されていれば、安心感はまったく違ってきます。

 こうした場合に便利な存在が、ポータブル電源です。価格は2万円前後の小型モデルから、10万円をゆうに超える大型モデルまで種類はさまざまですが、スマホなどの充電に使うモバイルバッテリーとは桁違いの容量があり、スマホの充電や夜間の照明にとどまらず、家電製品を使うこともできてしまいます。

 とはいえ、どんな家電製品でも使える万能アイテムというわけではなく、何ができて何ができないかを知っておくことは重要です。今回は災害時の備えとしてのポータブル電源の選び方を、著名メーカー2社の製品を例にチェックしていきます。

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ポータブル電源の例。左がJackery(ジャクリ)の「Jackery 240」、右が「Anker 521 Portable Power Station」。ポータブル電源の中では低容量かつ安価な小型モデルで、実売価格は2万~3万円程度

ポータブル電源は「何でもできるわけではない」?

 ポータブル電源は本体にコンセントを備えており、家電製品をも使えることが大きな利点ですが、電子レンジやポットなどの調理家電や、ヒーターなどの暖房器具をつないで使うのは、いかにポータブル電源といえども困難です。なぜならポータブル電源は、あらゆる家電製品を駆動させられるほどの定格出力(W)を備えているわけではないからです。

ポータブル電源はモバイルバッテリー(右下)の数倍~十数倍の「容量」を誇りますが、「定格出力」には製品ごとに上限があり、あらゆる家電製品に使えるわけではありません

 例えば下位のモデル、実売価格でいうと2万~5万円以下のポータブル電源は、定格出力が200~500W程度ゆえ、扇風機やテレビ、小型の冷蔵庫がなんとか使えるレベルで、容量的にも数時間持つかどうかです。どちらかというとスマホを充電したり、夜間の照明として使うのが、主な使い道ということになります。

 上位のモデル、実売価格が10万円を超えるポータブル電源は、定格出力が1000W以上あるため、より幅広い家電製品が使えます。ただしその場合でも、電子レンジやドライヤーのような、瞬間的に1500~2000Wもの電力を消費する家電製品には対応しきれません。さらにワンランク上、20万円クラスの製品が必要になります。

 いくら災害時の備えになるからと言っても、10万円を超える費用をいきなりポンと出せる人はそう多くはないはずで、現実的には、予算的に手が届くポータブル電源を調達しつつ、調理にはカセットコンロを用意するなど、ポータブル電源自体を防災計画の一部として適材適所で織り込んでいくことになります。