時ならぬ「笑い声」で目が醒めた。
洞爺湖畔のキャンプ場で焚き火と酒を楽しみ、寝袋に潜り込んだのは22時過ぎのこと。暗闇で探り当てた時計は、0時すぎを指していた。笑い声の出所が10メートルほど離れたところにテントを張り、バーベキューをしていた若者グループであることは、すぐわかった。
外で仲間と飲む酒が楽しいのはわかるが、この時間にこの煩(うるさ)さは、限度を越えている。意を決してテントを出る。
「本当に申し訳ないんだけど、ちょっとだけ声を下げてくれる?」
5、6人の大学生らしき若者たちは「あ、すいません!」と意外と素直に謝り、その後は静かになった。翌朝、「水を差して悪かったかな」と思いながらゴミを捨てにいった私は、絶句した。「燃えないゴミ」の中に、昨晩「彼ら」が使っていたバーベキューコンロがそのまま突っ込まれていたのだ。恐らく洗って持ち帰るのが面倒になったのだろう。
2008年にキャンプ人口は“底”を打ったが、再び上昇のワケ
「それくらいは、最近では『よくある話』ですよ」と、あるキャンプ場スタッフは嘆息するが、目下、世は空前のキャンプブームの渦中にある。そもそも日本における第一次キャンプブームは1994~98年頃、バブル崩壊の反動で、自然と触れ合う「人間性回復」のレジャーとして盛り上がり、キャンプ人口は96年にピークとなる1580万人に達した。
「その後、ブームは鎮静化し、2008年には、キャンプ人口は705万人とピークの半分以下にまで落ちこみますが、ここがいわば“底”でした」と語るのは、日本オートキャンプ協会の明瀬一裕会長だ。“底”を打ったキャンプ人口が再び上昇に転じるきっかけとなったのは、11年の東日本大震災だったという。
「私は各地でキャンプ教室の指導なども行っているのですが、震災以降、受講動機として防災やサバイバルといった要素を挙げる人が増えました」(同前)