これからの時期、気を付けなければならない「脱水症」。でも、本当に深刻な脱水状態を経験したことのない人にとって、その恐ろしさはいまひとつピンとこない。

 脱水症は何が恐いのか、放置するとどうなるのか……。

 あらためて知識を身に付けておきましょう。

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近年の日本を襲う「殺人的な暑さ」

 近年の日本の夏は、まさに「殺人的な暑さ」だ。何の対策もせずに街なかをほっつき歩いていたら、あるいはたとえ室内にいてもエアコンを使わずに過ごしていれば、何らかの体調不良を招くことになる。そのベースにあるのが脱水症だ。

「暑いところにいれば人は汗をかきますが、それが長時間続いて脱水症になると、今度は汗さえ出なくなります。口の中も乾いて、血圧も下降傾向になるので、気力が低下して眠くなってくる。これらは危険な兆候です。ただ、高齢者の場合はこうした“症状”が出てもあまり気にならないことが多いので、危険なサインを見落とすリスクが高いのです」

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 そう語るのは三好クリニック(東京・港区)院長で循環器内科医の三好俊一郎医師。

見逃せない「危険のサイン」は…

 三好医師によると、短期的な脱水であれば、適度な水分補給で回復するので、すぐに体に深刻なダメージが及ぶことは考えにくいが、発汗が止まって体温が上昇し始めると、熱中症で死に至ることがあるので要注意とのこと。「暑いのに汗が出ない」というのは、かなり危険な状況、ということなのだ。

 もう一つ、脱水状態を客観的に把握できる指標がある。「尿の色」だ。

 尿の色が透明、あるいは限りなく透明に近い黄色ならとりあえず心配ないが、黄色が濃くなるにつれて危険度も高まる。

三好俊一郎医師

 血液は腎臓で濾過され、不要な成分は尿に振り分けられる。ここで作られる原尿、つまり“尿の元”には、ミネラル、尿素、糖などが含まれている。しかし、この原尿はそのまま排泄されない。原尿に含まれる塩分や糖、アミノ酸など、体が「不足している」と判断した成分は、腎臓の中の尿細管というチューブ状の器官で吸収され、本当に不要な成分のみが尿として捨てられる。つまり原尿は「部品取り」にも利用されているのだ。