陽炎が漂うような炎天下でも、日傘をさして凜とした表情で歩く女性は涼しげだ。

 一方、滝のような汗で肌にワイシャツを貼り付けて、頭から湯気を上げて、口半開きで歩くお父さんの姿は、こちらまで暑くなってきそうで、できることなら見たくない。

 異なるのは「日傘の有無」。

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 汗濡れシャツのお父さんに日傘を持たせればあら不思議。汗も止まって表情もキリリと引き締まり、クールで爽やかな紳士に早変わり……。そこまでは極端ではないものの、当人の感じる清涼感は大きいはずだ。

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「炎天下における日傘による熱中症予防の有効性は論文になっていて、医学的にも推奨されるアイテムなんですよ」

 と語るのは順天堂大学医学部附属浦安病院皮膚科准教授の木村有太子医師。

 日傘が担う最大の効能は「紫外線から肌を守る」というもの。女性が日傘に求める最重要機能もここだ。メーカー側もそれは知っていて、傘の生地にUVカット加工を施すなど、さらなる販路拡大に力を入れている。

日傘の“もう一つの役割”

 しかし、日傘にはもう一つの大きな役割がある。「遮光による体表温度の上昇抑止」だ。

 この時期、日なたを歩いていてビルや木の陰を見つけると、誰でも陰を選んで歩く。そしてめざす陰に入った瞬間、その清涼感に恍惚の表情を隠せなくなる。そして、地球上に「陰」があることに感謝し、歓喜の涙にむせぶのだ。

 日傘をさす、という行為は、そんな歓喜を持ち歩くのと同じことなのだ。

「日傘の有効性を検証した論文には、炎天下のイベントで日傘を使うことで、熱中症のリスクを下げることができた――と書かれています。そう考えると、日傘を女性だけのものにしておくのはもったいないですよね」(木村医師)

 事実、そのことも生産者側は知っていて、メンズ日傘の開発には業界を挙げて取り組んできた歴史がある。

 国内約40社の洋傘メーカーで構成される日本洋傘振興協議会事務局の田中正浩氏は語る。