そろそろ梅雨も明け、本格的な夏が到来する。日差しが強くなるのに加え、海や山などアウトドアでのレジャーも増えるシーズンだ。降り注ぐ紫外線に対して、肌は日焼け止めなどで対策をしながらも、目については無防備な人も多いのではないだろうか。

 ここでは紫外線が目に与える影響や、その対策について新宿シティ眼科院長の小川葉子先生に話を訊いた。

 

意外と知られていない、紫外線の目への影響

——これから夏になり、日差しが強くなってきます。「サングラスで紫外線から目を守りましょう」などと言われますが、なぜそうすべきなのか具体的には知られていないように思います。

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小川 そうですね。まず紫外線についてご説明しますと、地表表面に到達する紫外線は、UVAとUVBに分けられます。UVAは315~380nm、UVBは280~315nmの波長帯で、これらは可視光線よりも波長が短く目には見えないものです。UVBは角膜で吸収され、UVAは水晶体で吸収されるとされています。

——目に見えないということは、眩しさを感じていなくても目は紫外線にさらされているということですね。とくに紫外線が強いのは、やはり夏なのでしょうか。

小川 1年のうち5月から8月にかけては紫外線の量が多く、UVBに関しては7月8月がピークとなります。1日のなかでは、太陽の高度が高くなる10時~14時に紫外線量が多くなると言われています。

新宿シティ眼科院長の小川葉子先生

——なるほど。では、紫外線によりどのような影響があるのでしょうか。

小川 長時間にわたり過度な紫外線にさらされると、急性もしくは慢性の紫外線障害が生じることがあります。前者は、急激かつ集中的に紫外線を浴びたときに起こるものです。たとえばその一つが、角膜(黒目)の日焼けである、「紫外線(光線)角膜炎」です。晴れた日にスキーをした後、目の痛みや充血などが起こる「雪目」もこのひとつにあたります。これからの季節だと、一日中海やプールで太陽光を浴び続けるようなときも注意する必要があるでしょう。

 痛みがしばらく取れない場合は、ぜひ早めに眼科を受診されることをおすすめします。何らかの理由で角膜の修復異常が起こってしまうと、傷が残ったり慢性化したりする恐れがあります。

長年紫外線を浴び続けてきたことが原因になる病気も

小川 また、紫外線を慢性的に浴びることで引き起こされる病気もあり、これらについては紫外線の累積量が重要となります。たとえば、目の表面の慢性炎症性疾患である「翼状片」などがその例で、屋外で多くの時間を過ごす職業に従事している方は、気を付けたほうがいいでしょう。黒目に隣接する白目が黄色っぽくなったり、隆起したりする「瞼裂斑(けんれつはん)」も、紫外線が原因のひとつと言われています。

 さらに、白内障や加齢黄斑変性症についても、紫外線がすべてではないですが、要因のひとつにはなり得ると言われています。これらの病気は加齢に伴い発症するため、若い頃に紫外線を浴び続けたからといってすぐに自覚できるものではありません。また、最近では紫外線がドライアイの要因のひとつという報告も出ています。