——紫外線の累積量によって引き起こされるとなると、これらの病気を予防するためには、日頃から目に入る紫外線を防ぐことが大事になりますよね。「過度な紫外線は浴びないように」などと言われますが、“過度”とはどれくらいのことをいうのでしょうか。
小川 はっきりとした数字で表すのは難しいのですが、先ほど説明した急性の眼病の予防という点については、日常生活で浴びる程度の紫外線なら問題ないでしょう。ただし、ゴルフやテニスといった屋外で2~3時間以上行なうスポーツ、また直接光の反射を目に受けたりするスキーに加え、夏の海やプールサイドなどで過ごすときはサングラスなどで防御をしたほうがいいですね。
日差しが強い夏はもちろん、紫外線は一年中降り注いでいますから、慢性的な影響を予防するという観点では、年間を通じてある程度対策をされたほうが望ましいかもしれません。
コンタクトよりもサングラス・メガネがベター
——やはり目に入る紫外線を防御するという点では、サングラスが有効なのでしょうか。
小川 眩しさも同時に防ぎたいということであればサングラスが有効です。ただし、必ず紫外線カット効果の高いレンズを搭載したものを掛けるようにしてください。紫外線カット効果のあるものなら、メガネでも大丈夫です。
いずれも、あまり顔の形に合っていないものを掛けるとズレた隙間から紫外線が入ってきてしまうので、フレーム選びも大切なポイントです。専門性の高い眼鏡店に相談することをおすすめします。
——ちなみに、コンタクトでも紫外線はカットできるのでしょうか。
小川 UVカット機能を謳っているコンタクトもありますが、メガネと同等程度の防御は期待できません。というのも、コンタクトはいわゆる黒目と言われる角膜上で装用しますから、白目の部分は守られないんですね。たとえば先ほど申し上げたドライアイについては、紫外線により白目の上皮が傷つき、涙の成分の分泌が損なわれることが生じる要因のひとつとされています。
太陽光を浴びることによるメリットも
——なるほど。ここまで紫外線による影響について伺ってきましたが、一方で紫外線はある程度浴びたほうが良いとも聞いたことがあります。
小川 おっしゃる通り、紫外線を過度に恐れ過ぎて、まったく太陽光を浴びないというのも問題です。たとえば紫外線を肌に浴びることでビタミンDが生成されます。これが不足すると血中のカルシウムが不足するため、骨からカルシウムが溶けだし、骨粗しょう症を引き起こすと言われているんですね。また、昼間に太陽の光に当たることでサーカディアンリズムが整うと、質の良い睡眠を促すとも言われています。
——最近では、小児眼科学会や日本眼科学会などから、十分な太陽光を浴びない場合、小児の近視進行のリスクが高まるとの見解も出されていましたね。
小川 バイオレットライトといわれる、紫外線の手前のもっとも短い可視光線である360nm~400nmの波長には近視を抑制する効果があるという基礎研究の結果があり(Jiang X, 鳥居秀成、栗原俊英、坪田一男,et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 118, e2018840118 (2021))、最近、「サイエンス」という国際誌にもEditor’s Choiceとして取り上げられました。とくに発育段階にあるお子さんは、この太陽光を浴びることが心身の発達にも好影響を与えるとされていますので、過度に太陽光をカットするのは良くありません。つばの広い帽子をかぶるなどして、直射日光は避けるようにしながら外遊びをするとよいでしょう。
このように太陽光は心身の健康のために欠かせないものでもありますが、やはり過度な紫外線を浴び続けることは避けたいところです。日傘や帽子、そしてサングラスやメガネを活用して、紫外線と上手に付き合うようにしてください。
写真=今井知祐/文藝春秋
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