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尿の色はなぜ変わる?

 この時、体が「水分不足」と判断すれば、原尿の水分も吸収されて再利用される。これを「尿中の水分再吸収」と呼ぶが、脱水で体内の水分量が減ると、この「尿中の水分再吸収」が激しくなる。その結果、尿中に含まれるウロビリノーゲンという色素の濃度が高まり、尿が黄色くなっていく。

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 ウロビリノーゲンとは赤血球に含まれるヘモグロビンという酸素を運ぶタンパク質のなれの果て。本来は無色だが、酸化すると黄色くなる。これは再利用されないので尿によって排出される。少ない尿量の中でウロビリノーゲンの濃度が高まれば、尿の色は濃くなっていくのだ。

「暑い日に運動や屋外労働で汗をかいた後の排尿時に、普段より明らかに色の濃い尿を見た経験を持つ人はいると思いますが、あれはまさに脱水症状を示す兆候なので、急いで水分を補給してほしい」(三好医師、以下同)

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脱水状態が長く続くと身体に何が起こるのか

 こうした脱水状態が1日以上の長期間にわたって続くと、血液中の水分量が減ってドロドロになっていく。流れが悪くなって心筋梗塞や脳梗塞、下肢静脈瘤などの「血栓塞栓症状」や、腎臓への血流低下から生じる腎不全を引き起こす危険性が高まる。

 しかし三好医師によれば、現代の日本でこうした事態を招くケースは限定的だという。

「災害や山岳事故などで孤立して長時間にわたって水が飲めないような極端な状況なら考えられますが、そうでなければあまり現実的ではない。ただ、日頃から利尿剤を服用している人や、慢性的な下痢症状が続いている人は、薬の作用や症状が“長期的な脱水状態”と同じ状況を作り出すことがあるので、注意が必要です」

「水分補給」は大切だが、飲み方を間違えると逆効果に

 すでに触れたとおり、短期的な脱水であれば、すぐに水分補給をすることで危険を回避することができる。しかし、日本の酷暑はヤワじゃない。

「極端に気温が高い状況に身を置いていると“中心体温”が上昇して、細胞維持機能が停止してしまうことがある。具体的には体温が42度を超えると、全身の細胞が死滅し始める――と考えていいでしょう。当然、生命にも危険が及びます」