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「這い上がります」“キャバクラ謹慎”でどん底に落ちた元大関・朝乃山(28)に“本当の笑顔が戻る時”

2022/07/09
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“キャバクラ通い”は昨年1月から5月の間に計10回認定

 部屋での待遇も変わった。関取の座を失った春場所からは幕下以下用の薄い布団で寝ている。部屋関係者によると、関取用は敷布団が2枚重ねで分厚く、綿の量が違うという。今回の名古屋宿舎では大部屋に身を置き、掃除やちゃんこ番にも従事。食事は若い衆と同じで遅い順番だそうだ。2020年11月まで高砂部屋マネジャーを務めた元三段目・一ノ矢の松田哲博氏は6月下旬から名古屋入りし、宿舎設営などを手伝った。弟弟子の様子について「今はもう大関だったことを忘れて、雑用を率先して毎日やっている。下の者を使うこともない。別に無理してやっている雰囲気でもなく、淡々としている」と話す。精神面は落ち着いてきたのだろう。

 騒動の発端となった“キャバクラ通い”は昨年1月から5月の間に計10回も認定された。いずれも相撲協会による外出禁止期間中で、3月の春場所では場所中も入店。報道を受けて調査した協会側による事情聴取で一度は虚偽の返答をしてしまい、罪に罪を重ねた格好で厳罰へと至った。当時は大関昇進から1年前後という時期で、所属する高砂部屋関係者は、

「それまでがあまりにも順調に来すぎていた。大関に上がってから、どこかマンネリ化していたところがあったように感じた」

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 と証言する。

コロナ禍と重なり、昇進直後の夏場所は中止に

 確かに新大関で12勝を挙げたのが最高で、以後は10勝や11勝と何となく消化不良。途中休場でかど番も味わった。2度目の賜杯も、綱とりのチャンスも遠かった。

 あえて同情を挟むとすれば、朝乃山はついていなかった。昇進を決めた2020年3月の春場所は新型コロナの感染拡大が本格化した時期で、この場所は史上初の無観客場所となった。言うまでもないが歓声や拍手もなく、報道陣による取材も制限。大関昇進を懸ける場所特有の緊張感はさほど感じなかったと察し、あくまで目安の直前3場所合計33勝に一つ足りない32勝目をようやく千秋楽に挙げて昇進を手中に収めた。

朝乃山 ©文藝春秋

 さらに千秋楽から3日後の昇進伝達式も感染対策の観点から、出席者を両親などごく近い関係者にとどめて大幅に縮小。報道陣も代表数社の取材となり、伝達式に付きもののお祝いムードは低かった。昇進直後の夏場所は中止となり、日本中がコロナ禍に最も苦しんでいた時期がもろに重なってしまった。昇進披露パーティーも開けず、巡業や協会公式行事もない。朝乃山は「大関」という看板力士の重みを実感する場面に出会えず、地位に伴う自覚も芽生えにくかった。

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