「そんな法律はおかしいでしょ!」――亡き夫の愛人の存在を知った女性を襲ったさらなる不幸とは?
「愛人と相続」に関わるトラブルを、ジャーナリストの坂田拓也氏の新書『国税OBだけが知っている失敗しない相続』より一部抜粋してお届けする(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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相続税を申告した際に、「申告財産に漏れがある」「申告書に間違いがある」、または「課税対象なのに申告していない」と税務署が考えた時には、税務調査に入って追徴課税してくる。税務調査に入る割合は課税件数に対して10%を超え、決して他人事ではない。
しかも、税務調査が入れば 割以上の確率で追徴課税される。税務調査の実態とは?
税務調査は「申告から2年後」に行われる
調査官が税務調査に訪れ、追徴課税された時は、申告した額に申告漏れの額を加算して改めて相続税が算出され、不足分を追加で納める。申告漏れは悪意のないミスが多いとされるが、意図的に財産を隠し、悪質だと判断されれば、35%の重加算税が課せられる。
税務調査が入るのは、申告のほぼ2年後だ。2年かかるのは、提出された膨大な数の申告書を各地の税務署が精査し、税務調査に入るか否かを決めるまでに時間がかかるからだ。そのため申告したことを忘れた頃に追徴課税されることになり、金銭的にも精神的にも大変痛いという。
税務署は追徴税額の多いところを狙うと思われがちだが、少額でも税務調査は入る。
山梨県で不動産業を営んでいた男性が5年前に70代半ばで亡くなった。男性はバブル期は羽振りがよく、地元の長者番付に載ったこともあった。バブル崩壊後は経営不振に陥り、その後持ち直したものの、亡くなった時もまだ大きな借金が残っていた。
相続人は妻と40代の長女。2人は、父親が所有していた土地を売って銀行に借金を返済し、母親は残った預貯金、長女は有価証券を相続した。相続した財産は2人合わせても相続税の課税ラインより30万円少なく、相続税の申告は必要ないと判断した。
相続税の申告期限から2年後。税務署から突然電話がかかり、2人の調査官が税務調査に訪れた。2時間にわたり様々なことを聞かれたが、それだけで終わらず、2回目の訪問でさらに2時間を費やした。