主人公のハルヒは42歳で、2つ年上の夫と中学生の娘の3人家族。目下の悩みは、10年以上、セックスレス状態にあることだ。しかし義母には「2人目を産めばよかったのに」と嫌味を言われ、「このまま1回もせずに死んでいくのかな」と虚しさばかりが募る。

私の穴がうまらない』(おぐらなおみ著、KADOKAWA)はコミカルな絵柄とは裏腹に、夫婦の性の問題を鋭く描いたコミックエッセイ。2020年に刊行され、いまなおSNSを中心に読者の共感を呼び続けている。

 まず目を引くのが、一見すると過激なタイトルだ。

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「穴」という言葉に込めた思い

©おぐらなおみ/KADOKAWA

「この連載を始めるにあたって友人知人にタイトルを伝えたところ、みんな最初は笑うんですよ。でも『穴っていうのは、心の穴だよ』と言ったとたんに神妙な顔つきになって。その反応を見て、セックスレスといえども、したら即解決するような単純な問題ではないとつくづく感じました。大事なのは、満たされない日々を送るなかでぽっかり空いた心の穴を埋めることなんだな、と」(作者のおぐらなおみさん)

セックスレスの理由は人それぞれ

 登場人物のなかで性の悩みに直面しているのは、ハルヒ一人ではない。会社の同僚のヒカリ(42)は年下の恋人と良好な関係にあるものの、性交時に生じる痛みから「したくてもできない」状況にある。アルバイトのミヤコ(29)には一回り年上の夫がいるが、結婚当初に浮気されてしまった。それ以来、夫との性交渉を拒み続けている。

©おぐらなおみ/KADOKAWA

「40代にさしかかると、女性には更年期が訪れます。なかには体の水分が失われ、性行為の受け入れ準備ができなくなり、いずれは指一本も入らなくなる方もいるそうです。それまで普通にできていたことに痛みが伴うようになると、身体だけでなく、心も深く傷つくはず。恋愛における性の部分を重視している人であれば、なおのことでしょうね」(同前)