男性読者の怒りを買ったセリフ
主婦向けの生活実用情報誌『レタスクラブ』での連載時は一回あたりのページ数が少ないため、「心にガリッと残るセリフを毎回入れようと心掛けた」とおぐらさんは語る。「体に合わないシャツでも脱ぐように別れられたならどんなにラクか」など、印象的なセリフの数々には、意外な反響もあったという。
「『人間の3大欲求って(中略)なんで性欲だけは手持ちの駒(コマ)だけで満足しなきゃいけないんでしょうね』というミヤコのセリフは、男性読者の怒りを買ってしまって(苦笑)。『俺は女房に手持ちの駒だと思われているのか』『駒扱いなんてひどすぎる』と、Twitter経由で私に直接感想を送ってくる方がいるほどでした。でも、このセリフはミヤコだから出てくるものなんです。パートナーとのセックスを大切に思っているからこそ、性欲に負けて浮気した夫がどうしても許せず、駒としてスパッと突き放す発言をしてしまう。そんな彼女の複雑な心情をこのセリフに込めました」(同前)
「レス」の原因、夫側の言い分は
本作では、ハルヒの夫や子供の視点も織り交ぜながら、レスの原因が掘り下げられる。夫婦仲を修復しようと誘った温泉旅行で、「オレ、できなくなっちゃった」と意味深な告白をした夫。「したくない」ではなく「できない」。まったくできないのか、それとも「妻とだけ」できないのか――その発言の真意をはかりかね、ハルヒの心は千々に乱れる。
体を使った愛情表現を失ったとき、残るものはあるのか? ハルヒ、ヒカリ、ミヤコはそれぞれの方法でパートナーとの関係に決着をつけることになる。
「夫婦なんだから話し合えばいいと周りの人は言うかもしれないけれど、夫婦だから相談しづらいこともありますよね。家庭内の性欲の話は、その最たるものでしょう。そういうハードルを乗り越えて、心の穴を埋めるにはどうしたらいいのか。ハルヒたちがたどりついた三者三様の答えを見届けていただけたらと思います」(同前)