父親の死後、母親は娘を出産。山上容疑者ら3兄妹は奈良にある母方の祖父の家に身を寄せた。一家の知人によると、祖父は地元の名士だったようだ。
「おじいちゃんは小さな建設会社を営んでらしたんだけど、有名大学を出た優秀な方で、大阪の土木関係の下請け団体の会長を務めていました。ゼネコンからトンネル工事をいくつも受けていて昔から景気がよくってね。娘さんは2人とも優秀で、どちらもあの時代に有名大学を卒業しています。徹也くん(山上容疑者)のお母さんはお姉ちゃんで、妹さんは医者になっています」
子育てに邁進する母親 でも「宗教に入りたい」
引っ越し後、母親は祖父の経営する会社の役員になっている。親族によると母親は「経理を担当していた」という。当時、会社の経営はうまくいっており、親族らの助けを借りながら、母親は山上容疑者を含む3人の育児に奮闘していたようだ。
「お母さんはおとなしい感じの方。でも子ども会の役員など、頑張って育児をされていましたよ。徹也くんは勉強も凄くできたし落ち着いていたからか、勉強が苦手なお兄ちゃんを特に気にかけていました。この頃は早朝に出かけて家を空ける、なんてことはなかったと思います」(母親の知人)
しかし、別の知人は母親がこう漏らすのを聞いている。
「お母さんは思い詰めた様子でね、『宗教に入りたい』と相談を受けたことがありました。身内の不幸が重なって、深刻な悩みをかかえていたようです」
伯父の証言によると、1994年以前にすでに母親は統一教会にのめり込み、多額の献金を行っていたとみられる。前出の統一教会2世であるXさんは、献金システムについてこう証言している。
「毎年、年収の10分の1を寄付するのが通常の寄附です。ただ、そのほかにも『430代前までの先祖を供養するため』と数百万円かそれ以上の寄付を求められ、有名な『お壺を買いましょう』といったものあります。祈願書と言われるお札も有名で、お札は確か5千円、1万円、1万5千円とあって、自分の願い事とか清算したいことを書きます。そのお札を集めてお焚き上げすると、願いが叶ったり救われたりするといわれています。“免罪符”みたいなものですね。
教会は会見で寄附について『任意』と語っていましたが、信者にとっては『天国に行くために必要だ』といわれると義務も同然。ほとんどの信者は有り金がなくなるまで教会に貢ぎ、残った金でギリギリの生活をしています。かつては手持ちの全資産を教会に報告していた時代もあった、なんて話も聞きます。私の家も、祖父の代は比較的裕福な方だったのですが、両親はそのお金を使い切り、現在の暮らし向きはいいとはいえません」