理解できてしまう動機「統一教会のトップを殺したい」
「私は両親の『合同結婚式』の末に生まれました。統一教会では合同結婚式で生まれた子は『祝福2世』と呼ばれて自動的に教会員になりますが、私に信仰心はありません。ですので、自由に恋愛すらできないこの境遇への恨みは強くあります。高額献金によって家庭を崩壊させられた山上容疑者の『統一教会のトップを殺したい』という動機は、悲しいことに理解できてしまう。それだけこの国で2世が置かれている状況は辛く厳しいものなんです。
いくら統一教会に不満を抱えていても、そう簡単には誰かに相談できません。一般の友人には偏見が怖くて明かせませんし、教会内の人にも告げ口が怖くて話せない。私でさえ、教会内の幼なじみに話せないことがたくさんありますから」
特に山上容疑者のように、生まれた後に親が入信した子どもは『信仰2世』と呼ばれ、Xさんとはまた別の辛さもあるという。
「信仰2世は入信後の親の変貌ぶりも辛かったと思います。入信すればすべてをおいて信仰が優先されますから。それに信仰2世は祝福2世と結婚できないなど、教会内でも区別されます。容疑者には教会の内でも外でも強い疎外感があったのではないでしょうか」
山上容疑者は、宗教にのめり込む母親の元でどのような幼少期を送ったのか。手がかりをつかむため、約40年前に住んでいた東大阪市の住宅街へ向かった。当時、山上一家と交流があったという近隣住民によると、当時「まだ赤ちゃんだった」という山上容疑者は、両親と幼い兄とともに、ここへ引っ越してきたという。
「お兄ちゃんはまだ小学校にも上がっていないくらいじゃなかったかしら。でも頭を包帯でグルグル巻きにしていてね。大きな怪我か病気をされたみたい、と人伝に聞きました。ご主人も心の病気だったのか、仕事で外にでることなく朝からお酒を飲んでいました。お母さんは育児やご主人のことでかなり疲れているようでした」
「度を超えて見えた」母親の“熱心さ”
この時期、母親は“ある団体”に所属し、頻繁に活動に参加する様子が目撃されている。早朝に集会を行う団体として、当時この辺りでは有名だったという。
「お母さんは統一教会の信者だったと報じられていますが、当時所属していたのは別の団体でしたよ。ほかにも何人か所属している人はいましたから、珍しいわけではなかったんだけど、特に熱心に活動してらしてね。毎朝のように朝早くにでかけて、数時間家を空けるなんてことも多かった」(同前)
この時期、山上容疑者もその兄も未就学児。本来であれば一時も目を離せない年ごろだ。それゆえに母親の“熱心さ”は、周囲からは度を超えて感じることもあったようだ。
「ある朝、目を覚ましてお母さんがいないと気が付いたんでしょうね、お兄ちゃんが、寒空の下に裸足で出てきて、必死にお母さんを探していたことがあります。『お母さんどこ』って……。その姿が不憫でね、保護したのを覚えています。その後お兄ちゃんは『お母さんに会いたい』って言ってすぐに家へ帰っていきました。
ご主人は集会への参加を反対してらしたから、口論になることもしょっちゅう。いつだったか、朝出かける奥さんをご主人が車で追いかけようとして、近所で交通事故を起こして騒ぎになったこともあります」(同前)
そして山上一家が引っ越してきて数年後、父親が自ら命を絶つ。
「引っ越してきてまだ2、3年だったと思いますが、近くのマンションから飛び降りたと聞きました。その後すぐに残されたご家族は引っ越していきました」(同前)