17歳でデビューし、20歳でひとり、パリに逃避。写真家・立木義浩に乞われ、27歳でヌード写真集を出版。シングルマザーとして27歳の時出産した子は、わずか7時間でこの世を去った――。
波乱万丈な女優人生を送る加賀まりこさんが、59歳から育んできた最後の恋をせきららに語ります。
「加賀まりこ77歳。59歳から育む、おだやかな最後の恋。」を、「週刊文春WOMAN2021年秋号」より全文転載します。(全2回の1回目/後編を読む。年齢・肩書き等は公開時のまま)
◆ ◆ ◆
自閉症の息子が45歳に
私なんかは自由に生きてきた方だと思いますよ。“女優さん”であることに縛られずに。今の人はかわいそうね。ネットで何でも拡散されてしまう。そりゃ、私の若い頃にも「まだキスもしてねぇってのに」っていうのは、ありましたよ(笑)。写真に撮られてダメになって。でもまあ、所詮その程度の恋だったんだから、いいんだけど。
加賀まりこさんは77歳にして今秋、54年ぶりに映画に主演する。その作品『梅切らぬバカ』で演じたのは、50歳になる自閉症の息子を一人で育てる老いた母親だ。
今は芸能人じゃなくても色々生きづらい世の中だと思うけど、他人のことを気にするなら、その何分の一でも、障害を持つ人や、その家族に目を向けてくれたらいいのにと思うのね。
私の連れ合いの息子が、自閉症なんです。45歳になったかな。すごく可愛いのよ。私にとっても息子です。コロナのせいでずっと会えなくて、すごく寂しいの。でも、少し前にどうしても届けなきゃならない薬があって、連れ合いが息子の暮らす学園に行って「わかる? 僕のこと」って聞いたら、「加賀まりこ!」って言ったんだって(笑)。
息子の存在があったから、彼を好きになった
連れ合いとは6歳年下の演出家、清弘誠さん。恋多き女のイメージが強い加賀さんだが、59歳の時から18年間、事実婚を続けている。
彼とは長年の麻雀仲間だったの。最初は私が好きになっても、こっちを向いてはくれなかった。若くして離婚して、お母さんに手伝ってもらいながら育ててきた息子が、自分が老いた後、どうやって生きていけばいいだろうかと彼は頭を悩ませてた。やっと私の方を向いてくれたのは、息子を預ける学園が見つかってから。事情はわかっていたから、私はそれまで5年間、ノックし続けた。