※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2022」に届いた原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】たなてつ(たなてつ) 阪神タイガース 50代後半。滋賀県出身。21年の「叶わなかった優勝実況 伝説の“10.19”近鉄バファローズの悲劇を演出した名アナウンサーの記憶」に続き、2年連続で出場するベテラン。本職は某公営競技の施行団体に勤める窓際族。

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「なんで甲子園球場ではイカ焼きを販売せんのですか?」

 先日、阪急阪神HDの株主総会で、「モノ言うタイガースファン株主」さんから投げかけられた要望だ。

 会場からは失笑が沸き、経営陣も「(甲子園の)メニューは毎年見直しをかけているが、現在のところはそういう結論に至っていない」と、イカにも事務的な対応でクリンチした。筆者は総会を「現地観戦」していたが、うまいものを素直にメニューに取り入れようとしないことは、イカがなものかという気持ちになったのだ。

イカ焼き(税込み154円) ©たなてつ

甲子園球場にイカ焼きがないのはなぜ?

 株主総会が終わり、筆者が一目散に向かったのは梅田・阪神百貨店。地下の「スナックパーク」にある「阪神名物いか焼き」という店舗が目当てだ。株主さんが求めるイカ焼きの総本山にはちょうどお昼過ぎということもあり、浪花のオバサマたちによる行列ができている。

 一番売れている税込み154円のイカ焼きを買ってみた。程よい大きさにカットした具と小麦粉とを混ぜ合わせてシンプルに焼き上げた「ザ・粉もん」。ソースを塗って食すと、もちもちした食感とイカのうまみとが織り成すハーモニーは、正に大阪グルメを象徴する味だ。最大で一日1万枚売れる日があるというのもうなずける話だ。

イカ焼きを求める行列(梅田・阪神百貨店) ©たなてつ

 熱々のイカ焼きを食べながら、甲子園球場のグルメガイドを調べてみると、「大阪三大粉もん」のうちたこ焼き・お好み焼はメニューとして存在するのに、イカ焼きだけがない。これは画龍点睛を欠いており、改善してもらいたいという気持ちに掻き立てられる。

 そういえば、昨年オリックス・バファローズの選手プロデュース企画で、無類のイカ好きとして知られるエース山本由伸投手がイカ焼きメニューを考案し、期間限定で販売したという具体的な例があったことを思い出した。

「ヨシノブ思い出の味イカ焼き!」と題して販売し、650円とやや強気の価格設定だったが、本人直筆のイラスト入りステッカーがおまけでついたこともあってよく売れたとのことで、お客様からも好評を博したという。

 タイガースさん! やはりイカ焼きを売らない手はないのでは?

 ところが、イカ焼き販売の可否について、当事者のタイガース球団に直接問い合わせてみたのだが、回答をやんわり断られてしまい、八方塞がりになってしまった。