仲邑は1分以上も言葉を発することができず…
囲碁のナショナルチーム監督を務める高尾紳路(しんじ)九段が仲邑の心理を読み解く。
「複数の選択肢がある中でどう打っても良さそうという局面は実は危ないんです。案の定、踏み込みを欠いて緩んでしまった。固くなって着手が不安定になってしまったんでしょう」
終局後、感想戦が始まったが、仲邑は1分以上も言葉を発することができず、涙ぐんでいるようにも見えた。記者の質問にも力なく応じ、聞き取れない記者から「もう一度お願いします」と促されるほどだった。
ただ、将棋界を席巻する藤井聡太五冠(20)も、初タイトル獲得は17歳11カ月。彼女はまだ13歳だ。
次のチャンスも目前に迫っている。25日には藤沢が持つ「女流本因坊」挑戦を懸けたトーナメントの準々決勝で、若手強豪の上野梨紗二段(16)と戦う。二人は大の仲良しで、仲邑は上野を「りさプー」と呼んで慕っているという。
タイトル獲得は時間の問題か
藤沢が言う。
「今年中にまた菫ちゃんと対局する事もあるかも知れませんね。彼女は若いし、メンタルの切り替えも上手。私が負けた準決勝の打ち上げの後、わざわざ私と上野愛咲美(あさみ)ちゃん(女流二冠・20)のところまでやって来て、『最近ハマってるんです。一緒にやりましょう』と詰め碁の携帯アプリを教えてくれて。3人で誰が一番早く詰ませられるか競争しました。盤を離れると可愛い妹のような存在で、対局中とは全然違う(笑)」
高尾九段もエールを送る。
「今の彼女に足りないのは経験。今回はそれを得た勝負だったと思います。慌てる事はないです。しっかりと実力をつけてからタイトルを獲った方が、長く第1線で活躍できる。敗戦を糧にして、菫ちゃんがタイトルを獲得するのは時間の問題だと感じています」
プロ入り決定時の記者会見で仲邑はこう語っている。
「夢は中学生のうちにタイトルを獲ること」
そのための「持ち時間」は十分に残っている。