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仲邑菫13歳 最年少タイトルを逃した“若さゆえの一手”

 囲碁の中学生棋士、仲邑菫(なかむらすみれ)二段(13)が7月17日、女流5大タイトルの1つ、扇興杯女流最強戦の決勝に進出。史上最年少でのタイトル獲得目前で、まさかの逆転負けを喫してしまった。

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2連敗を喫して藤沢女流二冠に初勝利

 仲邑は囲碁棋士の信也九段を父に持ち、2019年に日本棋院の「英才特別採用」の対象者として史上最年少の10歳0カ月でプロ入りした。その後も順調に勝ち星を伸ばし、勝率は実に6割5分を超える。

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 今回の大1番に勝てば、藤沢里菜女流二冠(23)の15歳9カ月という最年少タイトル獲得記録を大幅に塗り替えることになった。

藤沢女流2冠

 準決勝ではその藤沢と対局。タイトル初挑戦となった3カ月前の女流名人戦で、2連敗を喫して跳ね返された相手に初勝利を果たした。

 藤沢が振り返る。

「女流名人戦の時は菫ちゃんが少し緊張していて普段の力が出なかったんだと思います。今回は序盤からずっと私の方が押されている意識がありました。改めて彼女の強さを感じました」

勝利目前で“安全勝ち”を目指してしまった仲邑

 決勝の牛栄子(にゅうえいこ)四段戦でも、仲邑は中盤から優位に立った。現場にいた観戦記者の内藤由起子氏が語る。

「AIの評価値では、菫ちゃんの勝率予測は一時期95〜97%まで上がりました。実際、牛四段も終局後、『投げようかと思ったが、応援してくれる人の顔が浮かんでもう少し頑張ろうと思った』と負けを覚悟していた事を明かしています」

 藤沢が解説する。

「少し専門的になりますが、166手目で白(牛)がハネたところで黒(仲邑)が右となりをキレば、白が困っていた。その手を逃した事で混戦になりました」

 勝利目前で“安全勝ち”を目指してしまった仲邑。その後に打った8手で、AIの評価値はみるみる下がり、遂に逆転。控室の記者たちからはどよめきと悲鳴が上がったという。