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 配偶者の同意書については、妊娠を知らされた後、父親となる男性が「同意書にサインをする」と言ったにもかかわらず連絡が取れなくなり、その間に中絶可能期間を過ぎてしまったために中絶ができなくなるケースなどで、その後、女性が誰にも相談できないまま一人で出産、新生児死体遺棄事件につながることもある。そして重要なのは、こうした事件で逮捕されるのはいつも母親である女性で、父親にあたる男性の罪が追及されることはない点だ。

 事件化までは至らずとも、特に強制性交の被害にあった女性や、男性側の協力を得られず、数十万円かかる出産費用や10万円ほどの人工中絶手術の費用を工面できない女性にとって、経口中絶薬の承認・安価での提供は必要不可欠であるし急務である。にもかかわらず、蓋を開けてみれば外科手術と変わらない金額を用意せねばならず、用意できなければ出産し、さらに経済的・身体的負担を強いられることになるなんて、女性の人権を軽視しすぎているにもほどがあると怒りを覚えてしまう。

性教育は「はしたない」のか?

 人間が生きるうえで、子供をもうけるうえで必要不可欠な知識である「性交」「避妊」「中絶」などの言葉を授業で使っただけで批判が起きるというのは常軌を逸する性嫌悪とも言うべきで、日本の人権教育の遅れを痛感せざるを得ない。安倍元首相銃撃事件で明らかになった、旧統一教会と政治の密接な関係もまた、無関係とは言えないだろう。

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 例えば女性が「経口避妊薬(ピル)を飲んでいる」と聞くと「コンドームを付けずに性行為をしても良い」と解釈する男性は少なくないが、実際は経口避妊薬は月経困難症やPMSの治療にも使用されることが多いものである。さらに経口避妊薬は避妊率が100%ではないうえ、特定のパートナー同士でない限り、性感染症の予防のためにもコンドームを使用すべきである。こうした認識を男性側が持っていない故に起きる望まない妊娠もあることを踏まえれば、学校教育では性行為や避妊、中絶についての指導は最低限、必ず行われるべきであると思う。

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 さらに時代が進んで、今では月経困難症などの軽減や避妊効果が期待できる、女性の体内に挿入する「ミレーナ」などもある(出産を経験していないと痛む場合もあるので、主治医と相談して個別に最善の治療法を見つけるのが良い)。ミレーナは5年間効果が持続するとされ、半年に1回の検査は必要だが、経血量も大幅に減るためナプキン代も安くつく。月経困難症や経血過多の場合は健康保険適用のため、初診費用は3割負担の1万円ほど。

 このような女性にとって「必要な情報」も、おそらく教育現場では共有されることがないだろうと考えると、日本の性教育はもっと話題にされて、議論されるべきものではないかと感じる。