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「避妊や中絶について教えることができない…」教師も頭を抱える“日本の性教育”がひどすぎる理由

2022/07/27
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 30歳の私が義務教育で性教育を受けていたのは、かれこれ15年前になるのだけれど、現在の中学生が受けている性教育は当時よりもさらに「保守的」になっていると知って非常に驚いた。

教育現場では性行為について教えることができない

「身を守る以外にも、生きていく上で絶対に必要な知識ですから避妊や中絶についても生徒にしっかりと教えたいんですが、それが許されないので、現場の教員は頭を悩ませていますよ……」

 そう語るのは、中学校で教鞭を取る20代の男性。特に保健体育で性教育の授業を行う際は、学校側や保護者から、厳しい監視の目が光るという。

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「性教育の他にも、政治の話だったり、あとは家庭に問題がある生徒が助けを求められるような制度を授業で取り扱うと、すぐさま学校から厳重な注意が入るんです。保護者から『うちの子に変なことを教えるな』と苦情が入ることも……。教育委員会から指導が入ったこともあるようで、学校からは『とにかく今まで通り、無難な授業をやってくれ』と言われています」

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 こうした事例は、決して限られたケースではない。2018年には「性交」「避妊」「中絶」という言葉を授業内で用いた東京の区立中学校に対し、都議会が「学習指導要領に記載された内容を超えて不適切な指導である」として批判、その後、都教委が区教委を指導するといったことが起きた。

 性教育において「性交」「避妊」「中絶」を教えることが一体どう「不適切」なのかまったく理解できないが、文部科学省による「中学校学習指導要領」を参照すると、以下のような記述があった。

〈妊娠や出産が可能となるような成熟が始まるという観点から、受精・妊娠を取り扱うものとし、妊娠の経過は取り扱わないものとする。また、身体の機能の成熟とともに、性衝動が生じたり、異性への関心が高まったりすることなどから、異性の尊重、情報への適切な対処や行動の選択が必要となることについて取り扱うものとする〉(平成29年中学校学習指導要領より)

 1998年の改訂で追加された「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という一文により、教育現場では性行為について教えることができなくなり、精子と卵子がどのように受精に至るのかすら取り扱えなくなったのだという。

トンデモ知識を信じたまま大人になるケースも

 このような「はどめ教育」は果たして、本当に「子供のため」になっているだろうか?