学校で性行為や正しい避妊の知識を教えない現状、思春期を迎えた子供たちがどこで性の知識を得ているかといえば、アダルトビデオや漫画、インターネット、SNS、友人や知人からだろう。
「膣内で射精してしまった場合、コーラで洗浄すれば大丈夫」「避妊具を付けなくても、膣外で射精すれば妊娠しないと思っていた」という風に、間違った認識のまま大人になり、望まない妊娠をしてしまう若者も少なくない(このようなトンデモ知識を信じるのも子供のうちだけだろう、と思っていたのだが、認識が正されないまま大人になるケースも多いようだ)。
私が中学生、高校生の頃でも上記のような認識でセックスをしている友人はいたし、逆に恋人とのスキンシップについて「口淫だけでも妊娠する可能性はあるか?」と深刻な顔で相談をしてくれた女性もいた。そう考えると、学校で正しい知識を教わらないために情報を判別する能力が育たないまま、アダルトビデオや人から聞いた話、インターネットで得た知見で性行為が行われている現状こそ、子供たちを危険に晒しているように思えてならない。
議論される人工妊娠中絶
学校で「安全な性行為」について教えないにもかかわらず、国内では望まない妊娠をした女性への救済や支援が薄いこともまた、深刻な問題となっている。
人工妊娠中絶については国内外でもその是非が議論されているが(私個人としては女性が子供を産むかどうか自由に選択できる制度は絶対に必要であると考える)、外科手術なしで人工妊娠中絶が可能な経口中絶薬の承認に関して、厚生労働省が5月に示した「(現行の外科手術と同様に)原則、配偶者の同意書が必要である」という見解は、日本の人権意識の遅れを露呈するものであったと思う。
国内の経口中絶薬については以前も、海外での平均価格が740円であるのに対して、日本産婦人科医会の木下勝之会長が「薬の処方にかかる費用について、10万円程度かかる手術と同等の料金設定が望ましい」と発言したことで物議を醸した。
このように経口中絶薬の承認にまつわる一連の流れを見ていると、強制性交の被害者や、男性側が避妊具を装着してくれないなどの事情で「望まない妊娠」をした女性がすみやかに処置を受けられるはずの「経口中絶薬」の必要性や緊急性を、国側がよく理解していないのだと思い知らされる。