いまのチームには“ウザい先輩”が見当たらない
ところで、内さんと言えば、マリーンズ一筋17年。昨年4月24日のホークス戦前に行われた“ラストピッチセレモニー”でも「マリーンズ大好き!」と叫ぶほどのチーム愛の持ち主でもあります。
その彼がいま、憂えているのが「暑苦しさ」の圧倒的な不足。頼まれもしないのに、時として熱い言葉を吐いてまわる「ウザい先輩」。そんな、どう考えても面倒くさい役回りを率先して担える人材がいまのチームには見当たらない、と言うのです。
「いまの若い選手たちには、あんまりそぐわないのかもしれないですけど、やっぱりこう、誰かしらが厳しいことを言えないと、チームとしてはまとまんないんじゃないかと思うんです。馴れあってるだけじゃ強くはなれないし、ここ一番でズバッとモノを言える人間がいるかどうかは、実はけっこう大事で。まぁ、『もう、そんな時代じゃない』って言われたら、返す言葉もないんですけど」
実際、現役当時の内さんにも「自分がそうなろうとした時期はあった」。
「でも、ある日の“投手会”でみんなの前で檄を飛ばそうとしたら、話してるうちに熱くなりすぎて泣いちゃって。『最後にひと言あるみたいなんで』ってわざわざ振ってくれたワク(涌井秀章/現楽天)からも、『なんで泣いてんの?』ってイジられまくって、尻すぼみに終わってしまったんですよ(苦笑)。本来なら、生え抜きで実績もある益田(直也)あたりがビシッと言ってくれるといいんですけどね。選手同士じゃないと響かない言葉って、間違いなくあると思うので」
こればかりは本人の性格もあるし、その時点での当人が置かれた状況によっても発言力はマチマチ。かつてはチーム内の恒例行事であった“投手会”のような親睦会を定期的に開くというのも、コロナ禍の現在はなかなか難しいことかもしれません。
ただ、物理的なハードルは高くとも、若き日の内さんが偉大なる先輩たちから受け取ったその熱い気持ちは、ぜひとも継承されてほしいもの。投手陣が危機に瀕するこんなときだからこそ、一致団結して苦境を乗り越えていってもらいたいと切に願います。
ちなみに、周囲の雑音をシャットアウトするべく、復帰する際は「実戦一発目のインパクトに懸けていた」という内さんですが、その一方では「自分が活躍できても、それがチームの勝利に繋がらなければ、そこに喜びはなかった」ともおっしゃっていたのが印象的でした。
巷では「プロ野球選手もしょせんは個人事業主」なんて言い方もされますが、本質的にはそうであっても、全員が共有する大きな目的のためにひとつになれるというのが、野球というチームスポーツがもつ最大の醍醐味。そこにこそ、ぼくらが熱くなる理由もあるのだと思います。
手術明けの種市篤暉か、はたまた、支配下再昇格の松永昂大か。復活の唐川侑己、西野勇士か、あるいはその全員でも構いません。ペナントレースの山場はまだこれから。チームのピンチにチャンスをつかむ、12年前の内竜也を超える“救世主”爆誕の可能性も十分あります。
帳尻合わせの“秋ロッテ”こそが、ぼくらの真骨頂。「コロナのバカ野郎!」と叫びたくなるこのストレスフルな現状を辛抱した先に、そんな“希望の光”が少しでも見えてくるなら、残りの試合もあきらめずにちゃんと楽しみにできる気がします。
やっぱりぼくらも内さんと同じく、「千葉ロッテマリーンズ、大好き!」ですからね。
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