相撲界ってファンタジーの世界ですよね
おぐら そもそも、相撲界ってファンタジーの世界ですよね。社会から隔離されているとも言えるわけで。
鹿島 おじさんがのびのび生きられる世界が、角界なのかも。アポ無しで貴乃花のもとを訪ねていた伊勢ケ浜親方だって、責任をとって相撲協会の理事を辞任しましたが、結構偉いポジションの人でしたから。考えてみてください、この時代に半裸で太った男性たちが髪型を大銀杏にしているんですよ。しかも相撲協会の理事選には年寄(親方)が1票を入れる。こんな状況だから、ファンタジーが続いているんですよ。
おぐら 日馬富士の暴行問題にしても、「なんで横綱が下の人間を殴っちゃいけないんだ」って純粋に驚いた力士もいるでしょう。
鹿島 「お相撲さん」にはどこか親しみがあるし、敬意も払っているんだけど、怖さも感じている。一般人にとって角界はそういう訳の分からない世界じゃないですか。かといって「全部オープン化しろ」と通告したら、柔道がカラー道着になってレスリングのタックルを受け入れる、みたいなことになる。たぶん相撲ファンは受け入れないですよね。
角界のシステムが非常に不条理なものであっても「さすがに暴力はもう駄目だよね」と折り合いをつけるときが来ているんでしょうね。日馬富士と伊勢ケ浜親方の記者会見を見ていると、非常に不思議な感じがします。親方は「よその部屋の関取に指導をして、それが行き過ぎてしまった」と語っていて、暴力とすら気づいてないんですよ。「かわいがり」っていう言葉に変換されている。
おぐら あんまり納得いかないけど、とりあえずダメって言われたので、みたいな。
いよいよ「2017年おじさん大賞」の発表です
――お話は尽きませんが、そろそろおじさん大賞を決めるお時間がやってまいりました。ご自分の中の「2017年マイおじさん大賞」を挙げて、個人賞の発表をお願いします。
おぐら じゃあ僕は、遠藤憲一さんと最後まで迷いましたが、出川哲朗さんにします。
――おっ。意外なところへ。
おぐら 好感度の底辺からここまでの人気急上昇は、芸能界史上でもまれに見る大躍進。何年か前まで「生理的に無理」と言われ続けていたのに、冠番組は始まるし、食べ物や飲み物、ガスといった好感度が超大事なCMにまで出て。
鈴木 私も「生理的に無理」って言ってたから(笑)。
おぐら 出川さんに聞きたいんですよ。このV字回復をどう思ってるのか。20年間「生理的に無理」を突っ走ってたら、こんなに売れるってどういう気持ちなんだろうっていう。
――涼美先生の大賞はいかがですか?
鈴木 私は、二階さんにします。ちやほやしてくれそうだし……。
鹿島 すぐお礼の手紙が来るんじゃない? この時代、まだマンションとか買ってくれそうですよね(笑)。
――大嶋さんはいかがですか?
大嶋 木こりになった籠池さんの息子ですね。普段テレビを見なくて、ラジオをずっとつけっぱなしなんですけど、ある時ラジオのニュースで存在を知って、パッとビジュアルだけ見た時に、「誰この人。なんでこんなに時代が違うんだ」とびっくりしました。
鹿島 籠池ファミリーの声から入った場合、インパクトが大きいです。荻上チキさんの番組で籠池さんの独占インタビューを最初に聞いて「これ、何なの?」って。
大嶋 木こりの息子さんはラグビーをやっていたらしくて。
おぐら めっちゃ気になってるじゃないですか(笑)。
大嶋 やっぱり肩パッドがすごい気になって。おじさんにありがちなのが「オレ、昔野球やってたから、Tシャツの肩回りがきついんだよね」と言いながら、今では細腕な人。本人に「俺はラグビーをやっていた」という自負があるのか分からないんですけど、この人は洋服や動作全てがオーバーなんです(笑)。
――では最後に、鹿島選考委員長、お願いします。
鹿島 僕は、地方議員もヤバくて捨てがたいんですけど、角界から高見盛(振分親方)を選びたいと思います。
おぐら え!? 急に? これまで誰も言及していないのに(笑)!
鹿島 というのは、日馬富士の「ビールで殴った殴らない」という深刻な記事が多い中、「元高見盛うっかり高砂一門会の会場予約忘れて中止に」っていう日刊スポーツの大スクープが出たんですよ。あれ、最高じゃないですか。「お相撲さんはこうじゃなきゃ!」と思って。予約忘れて一門会中止になっちゃったって……。みんながクスッと微笑んじゃった。
おぐら 高見盛は現役時代からイジられてましたもんね。
鹿島 「お相撲さんらしさ」をこんな非常事態の時でも爆発させてくれたことに感謝したいです。街でお相撲さんに会うと、心なしかこちらもちょっとニコニコしちゃいます。
鈴木 テンション上がりますよね。高見盛に大賞のトロフィーを渡しにいきたい♥
――ものすごい「おじさん四天王」が出揃いましたね。今年もいい1年でした。選考委員の皆さま、ありがとうございました。
写真=鈴木七絵/文藝春秋