「私の中では、日経新聞の記者とAV女優になる大変さはだいたい一緒ぐらいなの」
こう語る鈴木涼美さんは、慶応義塾大在学中にAVデビュー。その後東京大大学院に進学し、大学院在学中に執筆した『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社、2013年6月)が「紀伊國屋じんぶん大賞 読者と選ぶ人文書ベスト30」に選ばれる。修士課程修了後は日本経済新聞社に勤務。5年半で退社した後、作家に。
そして、文春オンラインでは速水健朗さんとの時事対談「すべてのニュースは賞味期限切れである」を連載中で、雑誌「TV Bros.」では鈴木涼美さんの担当編集者でもある、おぐらりゅうじさん。鈴木さんの近著『おじさんメモリアル』(扶桑社)を中心に、このお二人による1996年から現在までの振り返り対談、後編です!
◆◆◆
おぐら このところ、バブル時代のファッションや言動が、バブル未体験の若い世代におもしろがられたりして、80年代後半から90年代の知識や体験も少しずつ教養の域に入ってきてる。
鈴木 うちの母親は私のことをすごいバカにしてたの。「70年代は面白い子がいっぱいいたけど、90年代はパーしかいない」って。90年代文化といえば、安室ちゃんだよね。
おぐら アムラーにしてもギャルにしても援助交際にしても、第三者がルポルタージュとしてまとめたり、社会学的に研究されたりはするけど、その渦中で体現していた人が主観で書いて、さらに文才にも恵まれてるなんてことはまずないから。そこが鈴木涼美の作家としての圧倒的な価値でしょう。
鈴木 渦中で体現していた人は忙しいので書いてる暇も必要もないですからね。でも、それを価値だって言ってくれる人は少ないので、おぐらさんは当初からそういう風に私を見極めてくださっている稀有な人ですよ。もちろん作品や文章について褒められるのも嬉しいですけど、多くの人が興味を持ってくださるのは、元AV嬢とか経歴の奇抜さだけだったりするわけじゃないですか。
おぐら 最近はAV女優が本を書いたりすることも多いけど、求められているのは刺激的な内容とドキュメンタリー性の強さだったりするし。たとえ小説だとしても。