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(左)『おじさんメモリアル』/(右)『新・ニッポン分断時代』

おぐら あとは、一流企業に勤めてるのになぜか人生を憂えている「エセ悟りおじさん」もおもしろかった。

鈴木 大学院生の頃に出会ったテレビ局員とバリ旅行に行った話ね。この人は、地方の名門校出身で、背も高いし、頭もいいし、わりとイケメンだったから、ミスターコンテストに推薦されたりもしてて。それなりにリア充ライフを送ってるのに、いつも心のどこかで「僕はここにいる人間じゃない」と思ってる雰囲気があった。好きな作家は白石一文。

おぐら いわゆるルサンチマンでもないし、どういう自意識なんだろう。

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鈴木 「おれはほかのチャラリーマンとは違う」って思ってるんじゃないですか? チャラチャラしたテレビ業界で浮ついてる自分が許せないっていうか。「静かな夜を知的な女性と知的な会話をしながら過ごさないとダメなんだ」とか言って、バリのリッツホテルの中庭の小道で「白い石、探そうか」って言い出したんだよね。

おぐら 白石一文ファンだから(笑)。小・中・高と段階を踏んで、女性を少しずつ知りながらモテていくのが大切とも書いてあった。もはや定番だけど、大人になって金とか地位を手に入れて急にチヤホヤされた男はだいたいヤバい。

倒錯の度合いがハンパじゃない「東大デビュー男」

 

鈴木 モテることに慣れてない男の人は危ないですね。日経に入社して新人研修が始まった頃に汐留で同棲をはじめた東大卒の証券マンが、典型的な「東大デビュー男」だった。東大に入って人生で初めてチヤホヤされて。それまでは地方の全寮制男子校に通っていて「田舎・寮・男子のみ」っていう三重苦で生きてきたのに、東大入ったらいきなりレースクイーンと合コンとかして、彼女になりたがっている女の子2人を呼び出して、先に到着したほうとヤリながら、もう片方を外に出して朝まで待たせたとか、間違った武勇伝らしき自慢話がいっぱいある人だった。それって武勇伝じゃなくて、ただの発狂じゃないですか。

おぐら 倒錯の度合いがハンパじゃない。

鈴木 この人に別れ話をしたとき、包丁を取り出して自分に突き立てたんだよ。それで仕事の合間をぬって強行的に引越しして、汐留から逃げたあとは一晩で着信が90件。都庁の記者クラブにまで包丁を持って押しかけたり、自殺予告をしてきたり。

おぐら その人が出演したAVを両親に送った人?
 
鈴木 そう。別れた後にもいろいろ私のことを調べ上げたあげく、私の両親にアダルト動画を送りつけたの。あれ以来、東大卒の男は門前払いしてる(笑)。