「意識はあるんですか?」「ないようです」
仕事へ向かう母親の元に学校の教頭から電話があったのは午前8時前。母親が振り返る。
「教頭から『準奈さんが頭から血を流して倒れているので急いで学校へ来てください』と言われて、とても驚きました。でも、最初は階段かどこかで転んで頭でも打ったのかなと思った程度でした。念のために『娘の意識はあるんですか?』と聞いたら『ないようです』と返ってきて……私はとにかく急いで学校に向かいました。学校に到着すると、救急隊員の方から『状況からみて4階から飛び降りたようです』と説明されて、何が起きたのか何も考えられませんでした」
準奈さんは学校近くの病院に緊急搬送され、懸命な処置が行われたが、すでに心肺停止の状態だった。変わり果てた娘と対面した父親は言葉を失った。
あばらが折れて肺に刺さっていて、脳の損傷も激しい
「医師からは『意識が無い。心肺停止で必死に輸血もしている。強心剤も打っています。片足が損傷してあばらも折れて肺に刺さっている状態です。脳の損傷も激しく、蘇生できても重い障害が残る可能性があります』と告げられました。せっちゃんはがんばってくれましたが、私たち家族の願いは届かず、午前9時11分に死亡が確認されました。顔は奇跡的に眠っているようにきれいなままでした。いまはせっちゃんの最後の顔と、生まれてきたときの顔を毎日、思い出してしまいます」(父親)
わずか13年の生涯だった。懸命に生きた準奈さんは山形県酒田市で生まれ育った。小学校3年生からバレーボールを始め、小柄ながら練習で鍛えたレシーブを武器に東北選抜小学生大会で優秀選手に選ばれるなど、活躍。将来はプロのバレーボール選手になることが夢だった。中学でもバレーボール部に入部し、亡くなる直前には地元のプロバレーボールチームの下部組織に入ることも決まっていた。
なぜ、憧れのチームに入ることを楽しみにしていた準奈さんが自ら命を絶たなければならなかったのか。