「3月までの調査では、何で(準奈さんが)亡くなってしまったのかわからなかった。そうなると学校はイジメ調査ではなく、幅広い基本調査、背景に関わる調査というのをしなければなりません。持ち物や本人の残した言葉を調べて、トータル的にどう見るかということに全力を注ぎましたが、結論としては『分からない』ということになってしまった。親御さんには『(準奈さんに)いろいろ蓄積していたことは分かりましたが、イジメが直接の原因だったのかはわからなかったです』と伝えました。私の行った調査(の結果は)はすべて教育委員会に上げています。加害者に関する噂で出たことについても、根拠があるかどうかについて調べ、(加害者とされる)本人にも面談をしましたが、その時は疑いでしたので『あなたがやったのか?』とまで問い詰めることはできませんでした」

 陰湿なイジメ被害を受け自殺した酒田市の中学1年生・石澤準奈(せつな)さん(13)が通っていた中学校の当時の校長は、約30分にわたって文春オンラインの取材に応じた――。(全3回の3回目/#1#2を読む)

亡くなった石澤準奈さん

※本記事ではご両親の許可を得た上で、準奈さんの実名と写真を掲載しています。編集部も、準奈さんの死の真相解明の一助になることを願い、可能な限り事実に忠実なかたちで伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

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中1の石澤準奈さんが校舎4階から飛び降り自死

 今年2月12日、多くの生徒たちが登校中だった午前7時50分に中学校の校舎4階から飛び降りて亡くなった、山形県酒田市内に住む当時中学1年生の準奈さん。準奈さんは生前、「死ね、キモい」などと書かれた手紙を繰り返し下駄箱に入れられるといったイジメを受けていた。

 昨年11月に校内で行われた「いじめに関する保護者アンケート」で、遺族がイジメの有無に関して「あてはまる」に〇印をして提出していたにもかかわらず、学校側が6月に回収した「あてはまらない」に〇印をしていたアンケートを11月分として教育委員会に提出していた隠蔽疑惑が浮上している。これらの事実は、準奈さんが亡くなった後に遺族の指摘で発覚したものだ。学校側は遺族に謝罪したというが、なぜこのような対応の不備が起きたのか。

 今も深い悲しみの中にいる準奈さんの両親。無念さを滲ませる父親が語った。

準奈さんはこの校舎4階から昇降口側へ身を投げた

加害者生徒の調査はわずか1カ月で打ち切られていた

「2、3月は学校がイジメをした加害者生徒の調査に動いてくれていると信じていました。毎晩のように前校長が自宅を訪ねてくれて、進捗状況を報告してくれていました。3月9日以降も、前校長や教頭が家に来て、私たちの話を聞いてメモを取り、『もう少しまとめて報告書をあげる』と話していました。一方で、『下駄箱に「死ね、キモい」と書かれた手紙を入れた犯人は分かりましたか?』と聞いても、先生たちは無言で考え込むだけでした。

 驚いたのは、教育委員会に学校側が上げた報告書を9月6日に確認したところ、報告書は3月9日付で上がっていたことです。つまり調査は準奈が亡くなってからわずか1カ月で打ち切られていたのです。寄り添っていただいていると感じていたのに、前校長や教頭には裏切られた気持ちです。下駄箱に置かれた手紙についても、その時点で保護者に伝えなければいけなかったと思います。もし聞いていたら、心配になって学校に犯人を捜してほしいと抗議したり、加害者がわかったら保護者同士で話し合いもできたじゃないですか。あの子を助けられたと思います」

教育委員会が入る酒田市役所

 では、なぜ学校側はイジメ行為が発覚した時点で保護者に伝えなかったのか。9月24日、準奈さんが在籍していた当時の中学校の校長に話を聞いた。