2021年2月2日未明。高校1年生だった15歳の佐藤洋二郎くん(仮名)はひとり自室にこもり、家族に何も告げずに人生を終わらせようとしていた。布製の縄跳びの紐で輪を作り、グリップ部分をカーテンレールに固定。プラスチックの踏み台に上がり輪に首を通し、踏み台から足を外す。
佐藤くんの全体重がかかったカーテンレールが折れ、体は床に投げ出された——。
(全2回の1回目/後編を読む)
「何をしたの?」「死ねなかった……」
佐藤くんの母親は、発見時の状況を静かに語った。
「朝6時半頃でした。いつもリビングの壁に掛けていた縄跳びがなくなっていることに気づき、嫌な胸騒ぎがして2階にある洋二郎の部屋へ急いで向かいました。ドアを開けると電気は消えていて、窓の外の雪に反射した街灯の光で、洋二郎が壁にもたれかかったままうなだれているのが見えました。窓のカーテンレールには、輪状になった縄跳びが掛かったまま。私が『何をしたの?』と聞くと、息子は目を閉じたまま『死ねなかった……』と、涙を流しながら話したんです。
私は混乱して、泣きながら『こんなことは2度としないでほしい』と1時間ほど話をしました。洋二郎の首にはうっ血した縄の痕が赤く残っていましたが、その日は病院には行かず自宅のリビングで安静にさせました。『学校なんかどうでもいい、命懸けで行くような所じゃない』と思ったのを覚えています。その日以来、洋二郎の部屋のドアはずっと開けたままにしています」
自殺未遂の1週間後、母親がカーテン付近で発見した“遺書”には、同じ学校の女子生徒3人から受けていたイジメへの苦悩が綴られていた。