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「死ねなかった…」バスケの街・能代で16歳の高校1年生が自殺未遂 背景に3人の女子生徒からの粘着質なイジメ

能代イジメ #1

genre : 社会, 教育

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鶏の糞がついた長靴を…

 佐藤くんに対する女子生徒たちのイジメがエスカレートした背景には、能代西高校のある"特徴"も影響していた。

「統合前の能代西高校は1学年60名の3分の2が女子生徒だったので女子の声が強いんです。さらに息子が通う農業科では鶏を出荷する農業実習があるのですが、実習後に鶏の糞がついた長靴を息子の鼻元に突きつけて洗うよう命令したり、農薬のようなものが入った箱を投げつけられたこともあったようです。ロッカーや机がゴミ箱のように扱われ、コーンポタージュの空缶が何度も放り込まれていたのは担任の先生も把握していたはず。女子生徒たちの嫌がらせは数え出したらキリがありません」(佐藤くんの母親)

 しかし佐藤くんは学校で受けているイジメについて、家族にも打ち明けることはなかった。A子さんの支えもあり、周囲に変化を悟られないように過ごしていたため両親も長らく気づかずにいた。しかし2021年1月18日、佐藤くんが学校で倒れる事件が起きる。

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イジメ発覚からの2週間

「担任の先生から『佐藤君が倒れました。すぐに来てください』と連絡があり、急いで学校へ向かいました。学校の空き教室で意識を失って保健室に運ばれ、私が着いた時は車椅子で意識が朦朧としている様子でした。自宅に連れて帰って数時間ほど布団で休ませたあとに話を聞くと、息子はしばらく口ごもっていましたが、同じクラスの女子生徒3人からイジメを受けているとぽつぽつと話しはじめました。

 息子は穏やかな性格で、それまで家で人の悪口を言ったことがなかったので驚きました。学校で倒れたのは、半年間ずっと言われ続けていた『死ね』などの言葉が突然フラッシュバックしたと話してくれました」(佐藤くんの母親)

能代はバスケットボールの聖地でもある ©️文藝春秋

 佐藤くんが家族にイジメを告白した1月18日の翌日、両親は学校にその事実を報告した。両親は学校の対処によって状況が解決に向かうことを願っていた。しかし2週間後の2月2日、佐藤くんは自殺未遂を起こしてしまう。16歳の青年を絶望させたのは、学校やイジメを主導した女子生徒たちの不誠実な対応だった。(♯2へ続く)

※厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」が掲載している、悩みを抱えた時の相談先はこちらから。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

「死ねなかった…」バスケの街・能代で16歳の高校1年生が自殺未遂 背景に3人の女子生徒からの粘着質なイジメ

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