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「処分はしない」能代イジメ16歳自殺未遂、高校が保護者に伝えた驚きの“言い分”《秋田県知事は「重大事態」認定》

genre : 社会, 教育

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 2月2日、当時高校1年生だった佐藤洋二郎くん(仮名)が自宅のカーテンレールに縄跳びをかけ、首を吊って自殺を図った事件。文春オンラインでは、男子生徒が同じ学校の3人の女子生徒から半年にわたって執拗なイジメを受け、追い詰められた末の自殺未遂だったことを報じた(#1)。

 佐藤くんが通っていたのは、秋田県立能代西高校の農業科。2021年4月にバスケットボールの名門としても知られる能代工業高校と統合され、現在は能代科学技術高校となっている。能代工業はバスケットボール漫画「SLAM DUNK」に登場する山王工業のモデルになった高校でもある。

能代科学技術高校 Ⓒ文藝春秋

 現地取材によって、イジメを主導した生徒やその家族の不誠実な対応、そして学校側の対応が後手に回り続けていたことが見えてきた。(全2回の2回目/前編を読む)

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「時間がかかれば口裏を合わせられてしまう」

 2021年1月18日、佐藤くんが学校で意識を失って倒れたことをきっかけにイジメが発覚した。倒れた理由を尋ねる母親に本人が「イジメ被害に遭っていた」と告白し、母親は翌日にイジメの事実を学校に報告するとともに事態への対処を要求した。

「洋二郎が倒れた翌日は学校を休ませ、学校に電話をして数カ月に及ぶイジメについて話をしました。最初は担任の先生でしたが、要領を得ず途中で学年主任のK先生に代わりました。すると『学校としては事実確認をしたいので短時間でも登校させてほしい』と言われましたが、本人の体調が悪そうだったので断りました。

 さらに翌日の1月20日には学校から電話があり、『C子は嫌がらせの事実を認めたがB子は否定している』という報告を受けました。他の生徒にも確認するので少し時間が欲しいとのことでしたが、息子の同級生から“C子がイジメを認めたことに対してB子が激怒して口論していた”という話を聞き、時間がかかれば口裏を合わせられてしまうと心配していました」(佐藤くんの母親)

バスケットボールの聖地として知られる能代の街 Ⓒ文藝春秋

「処分はしない」「答えられない」

 その後も、学校による調査はなかなか進まなかった。学校側はイジメを主導した生徒たちへの処分について「厳しく注意しました」と説明したが、佐藤くんの母親が生徒たちの保護者の反応を尋ねると「保護者には伝えていない」と答えたという。この頃から、佐藤くんの母親は学校の対応に不信感を募らせていった。

「1月26日に学校に電話し、意識を失って倒れるほどに息子を追い込んだイジメに対して『犯罪の意識を持って厳しい処分を望みます』と教頭先生に伝えました。しかし返答は『処分はしない』という信じられないものでした。それどころかイジメた生徒たちの保護者に連絡したかどうかさえ『答えられない』と。事を大きくしたくないという学校の意志が伝わってきました」(同前)