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genre : 社会, 教育

「今度は死ね」という罵声も

 学校で倒れた翌日の1月19日から学校を欠席していた佐藤くんは、「女子生徒たちは別教室で授業を受けさせる」という教頭の約束を信じて、女子生徒が停学中だった4月27日から本格的な通学を再開した。佐藤くんが受けたイジメについては、秋田県教育委員会の申し出で秋田県知事によっていじめ防止対策推進法28条の「重大事態」に認定され、4月には第三者委員会も設置されている。

 だが女子生徒の停学が明けた5月になると、別教室の話は反故にされ、学校の廊下などで顔を合わすことが増えた。

 佐藤くんはそのストレスで学校で倒れるようになり、弁護士に相談して登校時間や歩く廊下のルートを分けるなどの項目を学校側に約束させた。しかし現在も精神科に通院し、不定期に訪れるフラッシュバックに苦しめられている。

「5月に弁護士を通して学校側にイジメの調査状況を確認したところ6月に回答があり、3人の女子生徒たちは『“死ね”“キモい”“ウザい”等といった言葉をごく近い距離で複数回話したこと』だけは認めて他は否定しているという回答でした。学校は、3人が認めない限り何もできないという主張なのです。暴言について数日間の停学処分があったようですが、どんな処分かを私たちは教えてもらえませんし、鶏糞のついた靴を顔に突きつけて洗うよう強要したなどの行為については処罰すらされていません。しかも女子生徒たちは、洋二郎に対して『今度は死ね』『今すぐ退学しろ』という罵声を今も浴びせているんです」(同前)

佐藤くんの全体重がかかり折れたカーテンレール

 佐藤くんがイジメを苦に自殺未遂を起こしたことについて、3人の女子生徒たちはどう考えているのだろうか。未成年という事情を考慮し、保護者に取材を行ったが、B子の母親は「話すことは特にないです」と多くを語らず、C子の母親は「失礼ですけどお話することないので! 玄関に入ったら、警察に通報します」と声を荒げた。D子の母親も話を聞いたが「何もお答えする気ないので。二度と来ないでください」と回答は得られなかった。

 能代科学技術高校に事実関係を問い合わせると「生徒の個人情報に関わるため、一切お答えできません」という回答だった。

 当時の関係者で唯一取材に応じたのは、2021年3月まで能代西高校で校長を務め、イジメ事件の対応に当たった男性だった。

「懲戒指導だけが指導ではないので」

――佐藤くんが受けたイジメについて、学校の対応は適切だったと思われますか。

「佐藤くんが学校に来られなくなって、まずは学校に来られるような環境作りをなんとかしていこうと努めてはいたのですが、本人と直接会う機会もつくれず難しい部分がありました。(被害者と加害者の証言が食い違い)心証のところをしっかり決められなかった気はしています」

――イジメを主導したとされる3人の生徒の保護者への報告を1カ月近く行わなかったのはどんな理由だったのでしょう?

「事実関係について佐藤くん自身の話と3人の女子生徒の話が噛みあわない部分も多く、延び延びになってしまった。教育委員会とも相談しながら対応を探ったりはしていたのですが、2021年4月の統合で私は能代西高校を離れることになりました。再度しっかり調べて、もし新しい事実がわかれば佐藤くんが早く復帰できるように対応していこうと、新しい学校に引き継いだというところです」

――3人の女子生徒への対応は適切でしたか?

「(校長、副校長、学年主任、スクールカウンセラー、学校医らで構成する)学校いじめ対策委員会でしっかり指導したつもりではいます。懲戒指導だけが指導ではないので。対応が適切だったかどうかは難しいところではありますけども、本人が自殺に至るほど苦しんでいたということで、もっと深く踏み込んで考えてやるべきだったなと思います」

能代駅 ©️文藝春秋

「目立たなくていいから普通に生きたかった」

 高校が夏休みに入った佐藤くんに、現在の心境を聞いた。

「現状は、自分が思い描いていた高校生活とだいぶ違います。普通に部活してみんなと話してっていう感じで、変に注目されることもなく、目立たなくていいから普通に生きたかったです……。日常的に『死ね』『気持ち悪い』『学校来なければいいのに』という言葉を聞こえるように言われ続けて、モンペ(モンスターペアレント)と親の事までからかわれた時は、手を出しそうになりました。

 イジメを受けていたことを母に話して、父が校長先生に診断書を渡しても『能代西高校でのイジメが原因かどうかわからない』と言われて、言葉で伝わらないなら分かってもらえることをするしかない、と思い詰めて2月2日の出来事(自殺未遂)を起こしてしまいました。今はその時のことは思い出さないようにしています」

佐藤くんが書き残していた遺書

※厚生労働大臣指定法人「いのち支える自殺対策推進センター」が掲載している、悩みを抱えた時の相談先はこちらから。

その他の写真はこちらよりご覧ください。

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