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「なぜイジメたのか」「はぁ?」

 事態が進展しないまま自殺未遂事件から1週間が経った2月9日、学校から佐藤くんに「生徒同士で話し合いの場を作りたい」という申し出が届いた。学校の面談室で、担任、学年主任のK先生、教頭、養護教諭らの立ち会いで佐藤くんとB子、C子の話し合いの場が設けられたのだ(D子は、学校側がイジメを主導したことを把握していなかったため不参加だった)。佐藤くんが当日の様子を振り返る。

「C子さんから『嫌な思いをしてるんだったら悪いと思ってる』という言い方をされて、僕は『許す気はないけど分かりました』と言いました。B子さんとC子さんに『なぜイジメたのか?』と聞いたら、ふたりは『はぁ?』と言いました。その後に『イジメた自覚はあった?』と質問すると、『なんでお前の話は聞かれて私たちの話は聞かれないの?』とC子さんが大声で叫び、それで僕はまた気分が悪くなってしまって30分ほどで解散になりました」

佐藤くんがカーテンレールにかけた縄跳びと踏み台

女子生徒の保護者への報告を1カ月間せず

 その時点でも、女子生徒たちの保護者への連絡はまだ行われていなかった。K先生は佐藤くんの両親に対して「相手の親に話すつもりでいるが、来週いっぱいまで時間がほしい」(2月10日)、「明日頃から相手の親に報告する」(2月16日)と説明している。しびれを切らした佐藤くんの両親は、能代警察署に被害届を提出することを決めた。

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能代科学技術高校の様子 ©️文藝春秋

「2月5日から警察に相談をしていたところ、2月26日に能代警察署の生活安全課の方から『明日、話し合いの場を設けたので警察署に来てください』と電話がありました。誤解があるのであれば話し合いで誤解を解いてはどうか、とのことで2月27日に能代警察署内で警察官の立ち会いで私たち夫婦と校長、担任、学年主任で話し合いをすることになりました。

 その話し合いで、女子生徒たちがほとんどのイジメ行為を否定していることや、暴言についても『別の人に対して言った』と証言していることもわかりました。夫が『今回の件はいじめ防止対策推進法28条の重大事態に該当するが、どう考えていますか?』と校長に質問しても、『法令的にはイジメと捉えている』と繰り返すばかりで女子生徒への懲戒処分などは明言しないんです。煮え切らない態度に私が感情的になってしまい、その場を後にしました」(佐藤くんの母親)

秋田県庁 ©️文藝春秋

 その後、佐藤くんの両親が能代警察署に提出した被害届は4月15日に受理されたが、8月1日時点では具体的な捜査状況などの報告はまだ届いていない。