《娘は生前、学校でいじめを受けておりました。父も母も完璧な人間ではないために、苦しみの中にいた娘をどうして助けてやれなかったのか、今も後悔の念に苛まれる日々を送っておりますが、それでも娘とともに過ごした十三年は与えうる愛情の全てを注いできたつもりであり、娘が自ら命を断った原因はいじめであると考えております》

《学校が私たち遺族や加害者と言われている子ども達について早急に対応していたら、あるいは遺族に嘘や隠し事をしなければ、そもそも娘が担任や顧問に助けを求めた時に対応してくれていたなら、こんなことになっていなかったと心から思っています》

亡くなった石澤準奈(せつな)さん

 これは、昨年2月に山形県酒田市立第一中学校で自ら命を絶った石澤準奈(せつな)さん(当時13歳)の両親が、末松信介文部科学大臣に宛てた手紙の一節だ。便箋6枚に込められた直筆の両親の手紙には、準奈さんの死から1年が経過しても受け入れることができない苦しみが溢れていた。

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「大臣が個別のイジメ事案に言及することはかなり踏み込んだ発言」

 準奈さんが亡くなってから1年――。「文春オンライン」が度々報じてきた山形県の中1女児イジメ事件はついに国会でも取り上げられた。3月11日の参院予算委員会で梅村みずほ参議院議員が、酒田市教育委員会に対して遺族が感じている不満についての質問を行った。

準奈さんの母親が末松文部科学大臣に提出した手紙の一部

 それに対し末松文科大臣は、「調査の目的や方向性、調査組織やスケジュール感などの説明が不足しているなど、被害児童生徒や保護者の切実な思いに寄り添った対応が不十分と思われる事案が一部生じていることは事実でございまして、大変遺憾でございます」と回答し、酒田市教育委員会の一連の不手際を公の場で認めた。

 この発言に全国紙政治部の記者は「大臣が個別のイジメ事案に言及することはかなり踏み込んだ発言」と驚いたという。

※本記事ではご両親の許可を得た上で、準奈さんの実名と写真を掲載しています。編集部も、準奈さんの死の真相解明の一助になることを願い、可能な限り事実に忠実なかたちで伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

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 2021年2月12日、石澤準奈さんは多くの生徒たちが登校中だった午前7時50分に中学校の校舎4階から飛び降りて亡くなった。彼女は生前に、クラスメイトから「死ね」「キモい」と書かれた手紙を複数回にわたって下駄箱に入れられるなどのイジメを受けていた。