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「いじめの隠蔽の証拠ではないか」神戸市が存在を否定していた報告書が見つかる

2002年度から03年度に教育長を務めた西川和機氏が入手

2022/01/28

 2006年2月、神戸市立小学校で当時小学5年生の男子児童が同級生から暴行を受けたり、金銭を要求されたりしたことが発覚した。被害者側は調査を求めて陳情してきたが、16回目でようやく実現した。

 いじめは具体的にどんなものだったのか。父親によると、男子児童は「きしょい」「うざい」「死ね」「消えろ」などと言われていた。“K-1ごっこ”と称して暴力を受けたり、ものを隠されたりしたという。さらには金銭の恐喝にあった。総額で50万円ほど(ただし、学校調査では20万円ほど)だった。

 この問題をめぐっては、加害者との民事裁判で、男子児童側が勝訴した。その過程で裁判所からの問い合わせに対して、神戸市教育委員会(以下、市教委)は「いじめかどうかわからない」などと答えていた。しかし、関係者が入手した未公開の学校作成資料によると、いじめが発覚した当初から学校側は、加害者や被害者、両者の保護者から詳細な聞き取りを行っていたことがわかった。

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市教委が「ない」としてきた学校からの報告書が見つかる

 神戸市垂水区では2016年に市立中学3年の女子生徒が自殺した。このとき、いじめの内容を記した学校側の聞き取り調査のメモがあったが、市教委の首席指導主事の指示で隠蔽された。実は、同じことが、その10年前にもあったことになる。関係者によると、市教委が「ない」としてきた学校からの報告書が見つかり、「いじめの隠蔽の証拠ではないか」として注目されている。

今回、新たに見つかった学校作成資料 ©渋井哲也

 市議会への陳情は、「いじめの事実を『真剣に、積極的に』確認することを求める陳情」。その内容は、当時の教頭と担任に対して、市教委保有の資料と突き合わせて、いじめの事実を確認した上で、その結果を明らかにすること。それを拒否するなら参考人として招致することを求める内容だ。この陳情が2019年11月に採択されたことで、市教委のもとに調査委が設置された。

 男子児童の父親(58)は言う。

「本来はもっと早く調査委員会が設置されないといけない。この陳情の採択は、何十年に一回の奇跡だった。これまで自民、民主(当時)、公明の与党が多数を占めており、否決されてきました。しかし、このときの市議会(文教こども委員会)は、維新が躍進をしたことで、与党が5、維新や共産などの野党が5、無所属が1という構成でした。維新の議員がまとめてくれたのです」

 いじめが発覚したのは2006年2月4日。「校長はいじめでした、と言ってくれました。しかし、加害者側には“いじめではない”と二枚舌を使っていたので、いじめがますますひどくなった」と振り返る。