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「いじめの隠蔽の証拠ではないか」神戸市が存在を否定していた報告書が見つかる

2002年度から03年度に教育長を務めた西川和機氏が入手

2022/01/28
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資料を都合のいいように書き換えている?

 学校作成資料では、同年3月になっても調査している形跡がある。市教委作成の「時系列」でも同じで、3月になっても、校長が父親と会っていたり、警察署に出向くなどしている。3月8日時点で、授受があった金銭の額は「父親からの申告額56万4500円」と、加害側の7家族の金額の折り合いがつかないということも記載されている。

 父親は言う。

「『資料がないから、いじめがあったかどうかわからない』と市教委は市議会で説明していた。西川さんが入手した資料のうち、担任作成資料は、市教委作成資料と突き合わせているように見えるので、自分たちの都合のいいように書き換えている可能性がある。学校作成の資料の存在によって、十分、いじめがあったかどうかの調査をしていたことは明らか」

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破られた男子児童のノート ©渋井哲也

「市教委側は議会で虚偽答弁を繰り返してきました」

 隠蔽や偽造が事実ならば、市議会への答弁も虚偽ということになる。市議会文教経済委員会(2012年2月27日)では、裁判所の調査嘱託への回答について、以下のやりとりがある。

委員 校長が教育委員会にいじめ・恐喝と断定して報告書を提出した後に校長自身がその報告書は間違いだったと訂正した。だが、間違いを訂正した資料は一切存在しない。校長にも確認していないという陳情内容がある。あらためて、資料がなく校長にも確認していないのに、なぜ訂正をされたのか。

 

教育委員会事務局指導部長 当時の学校長が保護者の質問に対して回答書を作成した。その校長がその文面の中で断定できないと保護者に返した。さまざまな指導をしてきた結果、断定ができないということが実際に校長の口から出ている。

 

委員 なぜ校長の言ったのが、いじめがあったというところから、いじめがあったか、なかったかわからないという、そこのポイントについては回答書だと言われた。06年12月に回答されている。そこには前提として、教育委員会の関係課とも協議の上回答する。答弁だと、校長が勝手に回答書を作ったことになる。校長の言い分は変わったと聞こえた。だけど、教育委員会とずっと協議して変わったんですよ。

 

指導部長 いじめがあったかどうかはわからないということですが、その判断はできなかった。06年4月から私は3年間指導課長として勤務していた。06年2月にこの件があって、その後2月の途中までの記録は残っておりますが、年度末までの記録がありませんでした。(中略)公の文書に残っているもの以外細やかな記録は私の手元にはございません。

 議事録では、「2月の途中からの記録がない」と断言していた。この“記録”について、父親は「市教委側は議会で虚偽答弁を繰り返してきました。ここでいう“記録”は、具体的なものを指しているわけではないと思います。2月途中までしか記されていない記録そのものがないですから」と言う。