「どうして嘘をついたんですか?」
2015年4月から埼玉県川口市立中学校に通っていた元男子生徒の加藤健太さん(仮名・19)が在学中に不登校になったのは、サッカー部のグループLINE外しや部員からの暴行、嫌がらせ、部活顧問による体罰、そして、学校や市教委の対応が不適切だったためとして、さいたま地裁(岡部純子裁判長)が市側に55万円の損害賠償を命じた。
「もっと丁寧に配慮をしなければならなかった」と謝罪
川口市は判決を受け入れて控訴しなかったため、1月4日、判決が確定した。その2日後、教育長や当時の校長らが健太さんの自宅を訪れて謝罪した。健太さんの願いだった直接の謝罪が実現した形だ。冒頭の言葉は、長年、健太さんがずっと疑問に思ってきたことだが、きちんとした説明はなされなかった。
元生徒宅を訪問したのは茂呂修平教育長のほか、当時の松崎寛幸校長ら7人。茂呂教育長は「本日は謝罪をしにきました。裁判の判決は、教育委員会として真摯に重く受け止めています。これまでの長い間、心身ともに相当なご負担をかけた上に、大切な中学校生活が悲しみ、苦しみの時間になってしまったこと、まずもって心よりお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。また、『学校や市教委が嘘をついた』と言っていましたが、このことについて真摯に受け止め、もっと丁寧に配慮をしなければならなかったと反省をしております」と謝罪した。
本来なら心のケアを一番にすべきだった
また、松崎元校長は、用意していたメモを読みながら、「中学校でのいじめの対応でご迷惑をかけました。校長としての、いじめ防止対策推進法の解釈が甘く、いじめの認知、重大事態として早期の対応が必要であったと深く反省しています。市教委との報告・連携・相談が不十分だったと感じております。このことで正しい情報を伝えることができず、当時、話を十分に聞いてあげることができなかったこと、助けることができなかったこと、思いをしっかり受け止められなかったこと、深く傷つけてしまいました。さらに、中学校3年間、本来なら心身ともに成長する10代の前半がこのような事態となってしまったことについて、本来なら心のケアを一番にすべきだったと思います。長い間、このような生活が続いてしまったことについて申し訳なく思っております。このたびはご迷惑をかけ、深くおわび申し上げます。大変、申し訳ございませんでした」と、頭を下げた。
ただ、この日の謝罪で、メモを読み上げたのは、松崎元校長だけだ。