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「どうして嘘をついたんですか?」学校側がいじめ対応を謝罪するも“説明”は一切なかった《川口市いじめ不登校訴訟》

「どうして嘘をついたんですか?」学校側がいじめ対応を謝罪するも“説明”は一切なかった《川口市いじめ不登校訴訟》

判決受け、市教委・学校側が男子生徒の自宅に

2022/01/09

genre : ニュース, 社会

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松崎元校長が「校長として指導不足だった」と直接謝罪

 この日の謝罪のため、母親は市教委と事前に話し合っていた。そこで、松崎元校長や市教委が最初から虚偽報告をしていたこと、松崎元校長が健太さんの笑顔になっている写真を入手し、周囲に見せて、「楽しく過ごしていた」などと言っていたことを認めた。また、元校長が武南署まで行き、母親から恫喝されたと虚偽の事実を申告していたことまで明らかになっていた。この点について、この場で母親が茂呂教育長に確認をした。

 これまでも2016年11月1日、松崎元校長は健太さんの自宅を訪問して、「校長として指導不足だった」と直接謝罪した。一方で、当時、元校長は保護者たちには「いじめはない」と説明していた。そのため、「健太さんがいじめられていたと嘘をつき、登校をしない」「母親が健太さんを学校に行かせないのが悪い」などと見られていた。

 その後、母親は文科省に「謝罪はしているが、いじめと認めていない」と訴えた。そのため、文科省は県教委に対して、2017年1月4日、重大事態としての調査委員会を設置するように求めていた。県教委も市教委に指導・助言をしていた。そのため、3月から健太さんは登校するようになった。

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話を聞き、厳しい表情になる茂呂教育長

これまで教育長は直接謝罪していなかった

 ただ、学校側が保護者会を開き、説明を行ったのは2017年10月になってからだ。このときに初めて、サッカー部以外の保護者が知ることになる。ただ、虚偽の噂はすでにインターネットの匿名掲示板で流れていた。保護者への説明が不十分だったためか、掲示板にはすでに健太さんの実名が書き込まれていた。

 それを知った健太さんは11月から再び不登校になった。学校側が注意喚起を呼びかける文書を配布したのは11月末になってからで、後手後手になっていた。学校に登校しないために、母親は健太さんへの学習支援をお願いしていたが、現場の教員に共有されず、結局、計画通りの学習支援はなされていなかった。

 川口市いじめ問題調査委員会が設置されたのは2017年2月。2018年3月、同調査委はサッカー部の一部部員による「いじめ」を認定し、不登校の「主たる要因」と認める報告書を公表した。

 これを受けて、市教委の教育部長(当時)が「何よりも大切な生徒に悲しい思いを長期に渡ってさせてしまったことを深く反省している」と述べた。また、教育部長は、「いじめにより生徒が不登校に陥る事態を招いてしまい、その間、初期段階で組織的に迅速な対応が遅れてしまったことでさらに生徒を傷つけて信頼を損ねてしまった」などと謝罪する教育長のコメントを読み上げた。しかし、健太さんへの直接の謝罪はしていなかった。健太さんはずっと疑念を抱くことになる。

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